嬉野温泉　華の雫　エグゼクティブマネージャー　山下　和彦

＜若い社員が意見を出し合う新感覚の旅館づくり＞

　日本三大美肌の湯として名を馳せる嬉野温泉。奈良時代編さんの肥前風土記にも登場する歴史ある温泉郷だけあって、町中には老舗旅館が建ち並ぶ。そんな嬉野に2006年12月にオープンしたのが「嬉野温泉 華の雫」である。100％源泉掛け流し、近隣の海や山で採れた旬の素材にこだわった料理、落ち着いた部屋づくりなど、大人の旅を演出する基本アイテムはしっかり押さえ、旅慣れた人たちの評価を高めている。2009年秋に赴任してきた山下マネージャーは「ホテルと旅館のいいとこ取りです」と笑うが、現状に満足せず、常に顧客満足度を上げるために打ち出す策が功を奏しているのは間違いない。
　同旅館の従業員の平均年齢は30歳台前半。山下氏は34歳。料理長は36歳、最年長の仲居でさえ39歳で、20歳台の従業員も多い。年齢が近いだけあって、同旅館では従業員同士で意見を交換する機会が多い。夜の業務終了後、新しい宿泊プランやサービスについて話し合うミーティングを設けたり、トラブルが起きた時にすぐに集合して改善策を話し合ったり、従業員が集まる頻度が高いという。「みんな年齢が近いので自然と会話が盛り上がります」と山下氏。部屋の一輪挿し、ブランドソープのプレゼント、誕生日のフォトプレゼントなど、若い社員から出たアイデアが形になったサービスも多々ある。
　また、ネット予約の積極的な活用も同旅館の大きな特徴だ。じゃらんや楽天、JTBといった大手のホテル・旅館予約サイトや全日空の旅行サイトなど、現在、10種類以上のサイトと契約。加えて、旅行客の多様な要望にきめ細やかに対応するため、スタンダードプランや誕生日プラン、エステプランといったプランを90以上も用意し、それらをネット上で柔軟に入れ替えることで客の旅心を刺激。閑散期でも空き部屋を減らす工夫をしている。その成果もあり、予約客の実に８割以上がネット経由だという。しかも若い人向きと思われがちなネットだが、意外にも年配層からの予約も高いという。今後は中国や韓国からの旅行客にもアピールできるように海外の旅行サイトも積極的に活用していく考えだ。

＜交通が不便ななかでも高い集客を維持＞

　嬉野温泉は現在、九州新幹線長崎ルート（長崎新幹線）の開通に大きな期待を寄せている。それはこの地の交通機関がクルマかバスしか無いからだ。最大のターゲットである福岡市からの客も高速道路を利用している。公衆浴場「シーボルトの湯」の新設など、集客を呼び込む施策を市が打ち出してはいるが、新幹線の開通ほど起爆剤になるものはないのは明らかだ。
　その反面、交通がやや不便な故に静かな環境が保たれているという点もある。「仕事から解放され、のんびり過ごすには絶好のロケーションです。四季折々の風情を楽しんでほしいですね。私どもも『また来たい』と言ってくださるような施設づくりに邁進していきます」と山下氏は語る。現在の状況でも、高い集客を維持している「華の雫」のスタッフたち。将来、嬉野を盛り上げていくのは、こうした若者たちの手に委ねられていると言っても過言ではないだろう。

＜プロフィール＞
山下　和彦　（やました　かずひこ）
1976年４月佐賀県唐津市生まれ。08年、31歳で「アールリゾート社」に入社し、「唐津 アスカホテル」に配属。09年９月、「嬉野温泉 華の雫」にエグゼグティブマネージャーとして赴任。

＜会社概要＞
嬉野温泉　華の雫
代表者：山下　和彦（ホテル事業部エグゼグティブマネージャー）
所在地：佐賀県嬉野市嬉野町岩屋川内甲445-1
設　立：2006年12月
ＴＥＬ：0954-43-5066
ＵＲＬ：http://www.rresort-net.com/hananoshizuku/

※本稿は以下の書籍に掲載されています。

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