NET-IB NEWSネットアイ

ビーニュース

脱原発・新エネルギーの関連記事はこちら
純広告用VT
カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (101)
経済小説
2011年3月30日 14:04

平成21年1月「7億の土地が1.2億」

<不動産の売却>

 1月に入り、裁判所から債権届出書がたくさん返ってきた。それに毎日のように認識していなかった請求書が届き、これらが明らかに再生債権であれば新たに債権届出を行なっていただくようにしていた。当社の現業部門では債権債務を締めるという認識が薄かったため取引先に対して会社側からきちんと説明ができなかったことや、PM物件のリストアップ漏れのために債権届出の期間を延長せざるを得なかったことは前述のとおりである。

 一方、財産評定については公認会計士事務所に委託し、資料提出などの必要な対応は経理部長にて行なうこととして予定通りの日程で作業を進めた。こちらは、当初の予定通り1月末には提出にこぎつけることができた。そのなかでは、先に述べたように、予想破産配当率が2.78%という厳しい現状が示されていた。

裁判所から債権届出書がたくさん返ってきた... 民事再生の場合、再生債権のなかでも担保権や商事留置権が付された債権は、別除権付債権と呼ばれる。典型的な別除権とは、当社が銀行借入により土地を購入した場合に、土地に登記された根抵当権などである。民事再生の場合、別除権は任意に実行できることになっている。つまり、銀行は担保に取っている土地については、直ちに抵当権を実行し、遅れている返済の変わりに土地を取り上げて、それを競売に付したりすることができる。しかし、問題は、そうやって土地を処分してもまだ負債が残る場合である。たとえば、当社が銀行から10億円を借りて同額の土地を買い、銀行の抵当権も同額を極度として登記されている状態で当社が民事再生を申立てた場合、銀行はその土地を競売に付すことができる。しかし、市況が悪くなり当該土地が7億円でしか売れないことが考えられる。その場合、銀行は残る3億円を回収できない。この回収できない3億円は担保のない一般再生債権(取引業者などの通常の債権)として認められることになる。

 もともと当社の場合、負債の大半は銀行融資であり、ほとんどの物件で建築工事を止めていたこともあって、無担保の一般再生債権はさほど多くなかった。それなのに予想破産配当率がかくも悪い数値となるのは、この例でいえば担保割れの3億円が再生債権に回るからである。
 したがって、財産評定に当たっても、不動産の売却可能価格をいくらと見るかが重要なポイントであった。不動産鑑定では、通常は数カ月をかけてゆっくり売っていく場合の価格を評価するが、財産評定の場合は、そこに売り急ぎ修正率を乗じることで、もう少し早く売り切るための価格を導き出した。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

≪ (100) | (102) ≫

※記事へのご意見はこちら

関連記事

powered by weblio


経済小説一覧
純広告VT
純広告VT

純広告用レクタングル


IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル