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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (102)
経済小説
2011年3月31日 13:34

 1月に入り、いろいろなことが落ち着いてきたので、今後は不動産の処分にも取り掛かることとなった。人員リストラの結果、営業活動を行なう社員が不足するため、当社は全物件に専属専任の仲介会社を立て、顧客からの引き合いもすべてこの仲介会社に窓口を集約することで、少しでも高く買ってもらえる先に物件を売却していくことにした。不動産を少しでも高く売り、その結果、銀行債権の担保割れ部分が少しでも少なくなれば、それだけ取引先などの一般再生債権の配当率が高くなるからである。

 ゼネコンが建物を途中まで作っている場合は、その仕掛建物は当社の所有物だが、ゼネコンが保有していることになる。その場合、その仕掛建物はゼネコンが担保として押さえられる、というのが商事留置権で、これは土地に対する銀行の担保権と同じく別除権である。したがって建物が途中までできている場合は、その現状有姿の土地および仕掛建物を売ることで得た資金は、ゼネコンと銀行に分配して弁済することになる。通常、ゼネコンは施主が支払っている以上の出来高まで工事を進めているので、首尾よく売却できたとしてもゼネコンとしての資金回収率は低率とならざるを得ない。さらに、仕掛のままの建物を買うことには意味がなく、竣工させて初めてその建物を使用に供することができるので、残る工事の代金を取り決めることも必要である。このようなことから、工事中に民事再生を迎えた物件は、ゼネコンと銀行と買主の権利調整がとくに難しいのである。

ゼネコンが建物を途中まで作っている場合は... 名古屋で工事中だったビル(第1四半期決算の監査時に問題になった物件である)を例に取れば、この物件は銀行からは6億7,000万円の融資を得ていたが、財産評定での土地の鑑定評価額はわずかに1億400万円であった。また、建物が途中まで出来上がっており、その出来高は4億7,100万円であった。この土地の場合、結局このビルを途中まで建設したゼネコンが土地も含めて引き取ってくれたが、その土地代はわずかに1億2,200万円であった。また仕掛建物もゼネコンが引き取り、未払工事代金債権も放棄してくれた。簡単にいえば、銀行はこの土地を担保にとっていたにも係らず、6億7,000万円の融資を1億2,200万円しか回収できなかったのである。その上、不足額はすべて一般再生債権に回り、一般債権者に対する配当率を薄めることになった。

 販売活動の流れとしては、物件売却情報がいくつか集まったら、銀行と相談しながら、銀行が了承できる条件の相手先との間で売買契約を詰めてゆき、契約締結の準備ができたところで監督委員の同意を得る。監督委員と銀行の了承が得られれば契約を締結し、売買を実行することになる。売却に当たっては、売却で得られた資金の全額をそのまま銀行に弁済するのではなく、多少なりとも粗利益を計上し、その粗利益をもって販売経費に当てることで、少しでも一般債権者への配当率が高まるようにした。このあたりは会社更生法では強制的に行なわれているが、民事再生法では相対交渉となる。長年当社の顧問弁護士を務めていただいた安田先生には、岩倉社長他の営業担当役員と東京や札幌にも何度も出張しながら、二人三脚でタフな交渉をこなしていただき、ほとんどの銀行から、粗利益を若干いただいたうえでの弁済とさせていただいた。本当に感謝している。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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