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理念条例から政策条例へ(1)~福岡市・行政改革の実態(36)
行政
2011年3月 1日 07:00

<首長の予算編成権限との調整>

福岡市議会 議員立法(議員提案条例)の場合は、通常予算を伴わない理念条例が多いのですが、この生活交通条例のように予算を伴う政策条例となると、立法化するためのハードルはやはり高くなります。具体的には、地方自治法第222条の趣旨に基づく「首長の予算編成権及び執行権」との調整などが必要です。

 地方自治法第222条では、次のように規定しています。
「普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない」
 この規定は、条例(法)と予算の矛盾を防止するために地方自治体の首長に課せられた規定であり、議員立法(議員提案条例)には適用されません。しかし、予算の見込みのない条例を議員が立法化することは、やはり条例(法)と予算の矛盾をきたすおそれがあります。このため、行政実例において、「立法化には議会と市長サイドの執行部との十分な議論と調整が必要である」という趣旨が明らかにされています。

 これまで議員立法が"理念条例"の域を超えることができなかった理由のひとつには、予算との関係があると考えています。なぜなら、予算の編成権は首長に独占されているからです。議員立法(議員提案条例)で政策条例を作っても、予算がつかなければ現実問題として宙に浮いたままになってしまいます。議員立法の活性化に当たっては、そのあたりの調整と工夫が必要となります。

<多様な施策展開のための政策法務的工夫>

 このように、今後議員立法(議員提案条例)を理念条例から政策条例へと進化させていくためには、予算上の裏付けと具体的な施策内容の的確性が必要となりますが、それに加えて、地域毎に異なる特性に応じた多様な施策展開ができるような条例の定め方が必要となってきます。

 そのための政策法務的な工夫としては、「メニュー方式」や「協定方式」があります。
 「メニュー方式」は、ある程度類型化できる施策の内容を、あらかじめ条例に規定して、施策を実施する地域が主体的に選択していく手法です。施策の内容を条例に明記するので、透明性を担保でき、対象となる地域が選択するので、地域毎の多様性も一定程度確保することが可能となります。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第35回「議員提案条例の意義(2)」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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