「成熟社会」における「新しい政治・行政の仕組み」として欠かせない基本のひとつは、「地域主権」だと私は考えています。「地域のことは地域で決める」ということは、まさに「自治」の精神そのものです。
以前は「地方分権」という言葉が使われていましたが、現在は「地域主権」という表現がやはりしっくりきます。
なぜなら、そもそも憲法第92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と定めておりますが、ここでいう「地方自治の本旨」とは、「団体自治(地方の運営は、国から独立する自治体によって自主的に行なわれるべきである)」と「住民自治(地方の運営はその自治体の住民の意思に基づき、住民の参加 によって行なわれるべきである)」というふたつの概念を含んでいます。そして「地方分権」という表現では、その意味内容が「団体自治」のみに止まる印象がありますが、「地域主権」という表現は「団体自治」のみならず「住民自治」までも含めて理解しやすいと思っているからです。
「地域主権」の進展によって、地方自治体が持つ権限や財源が大きくなっていくと、その決定の場である「地方議会」が最重要の機関となってきます。
つまり、地域のルールを定めたり、地域に有益な政策を打ち出したり、そして、それにどのくらいのお金(公金)を使っていくのか、といった一連の政治・行政の決定プロセスにおいて、「地方議会」が中心的役割を担っていくことになります。
そのためには、これまでのように市長サイドの執行部が提案してきた議案をチェックするだけではなく、地方議員同士がしっかりと議論し、政策を提案するとともに、そのすべてのプロセスを市民に公開し、参加の機会をつくっていく必要があります。
「地方議員は選挙で選ばれているから地方議会に住民参加は不要である。」というようなの古い考え方から脱却しなければなりません。
現在、全国で約160を超える自治体で「議会基本条例」の制定が進んでいるのは、そのような新しい考え方が進んでいるからです。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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