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【再掲載】九電川内原発7人プラスα死傷事故~徹底解明と3号機増設論議は不可分(前)
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2011年3月18日 15:20
 東北地方太平洋沖地震の発生に伴う一連の原発事故への国や東京電力の対応が問題視されていることをふまえ、【2010年3月23日】から恩田勝亘氏が寄稿した原子力発電所関連の記事を再び掲載いたします。

 前回の九州電力川内原発における死傷事故の本誌記事に対し、読者から予想通りの反応があった。それは、「電気設備に関わる死傷事故はいくらでもある。場所が原発内だったというだけで特別視するのはおかしい」というもの。しかし、「原発内だからこそ記事にする意味がある」ということ、および新たに判明した事実を含めて続報する。

<「推定」による事故報告>
 これまで九電によるメディアへの発表、および同社が経産省原子力安全・保安院に報告した事故の概要は以下の通りだ。

川内原子力発電所 事故が起きたのは1月29日午前7時7分、1号機タービン建屋内の配電室。配電設備点検のため、受電盤遮断器の一つを停電。作業員の1人が、帯電している微弱な電気を地中へ逃がすアースを遮断器に取り付けようとしたときだった。九電の報告によれば、アースが隣り合わせの充電している遮断器に接触、ショートしてアーク(火花)が発生。噴出した高熱のアークガスにより当該作業員は「熱傷」すなわち火傷で死亡、同じく2人が重傷、4人が軽傷を負ったというもの。

 これは、2月22日に九電が経産省原子力安全・保安院へ提出した事故報告で、最終結論ではなくこの時点における「推定」としている。それを同院はその日のうちに「妥当」として、原子力安全委員会へ報告した。原発での事故は同院が行政の立場から独自に調査するため、全国の原発所在地に要員が駐在している。その立場からの見解については、「九電からの聴取や意見交換をしてまとまったのが報告書です」(同院電力安全課)というわけで、事故報告は九電と安全・保安院の合作による「推定」であり、最終的に原因解明されたわけではない。

 報告は、取り付けようとしたアースが隣接する通電中の遮断器に触れてショートしたという推定、すなわち作業員による人為ミスをにじませたものだ。しかし、当事者が死亡しているうえ、直近で作業を見守っていた2人が重傷で「まだ聴取もままならない」(薩摩川内警察署)段階での推定が、妥当かどうか。仮に作業員のミスだったとしても、それはなぜだったのか―。

 鹿児島県薩摩川内市の同発電所には、電気出力89万KWの原発2基が稼働する。1号機は1984年、2号機は85年に運転を始めた。今回が20回目という1号機の定期検査(定検)は、年明けの1月4日からだった。運転を止めて行なう定検は、原子炉やタービンなど原発内のあらゆる箇所を、それぞれの専門家の指揮下で保守・点検する。期間は平均3カ月だが、不具合などで想定外の修理を必要とする場合は当然ながら延びることになる。

 「終了予定日は公表していません」(九電広報部)と言うが、電力会社としては年間稼働率=生産性を上げるには、早く済ませたいのが本音だ。

(つづく)


恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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