今年２月11日、ベスト電器は香椎本店を「B・B」に模様替えしリニューアルオープンした。雪が舞い降るあいにくの天気だったが、三連休の初日に狙いを定めたこともあって、セール品を求めにきた客足は上々だったようだ。

　「B・B」のコンセプトは「『安さ』と『サービス』を兼ね備えた今までにない新スタイルな家電専門店」。とくに、これまでネックとされていた「安さ」という低価格路線を前面に打ち出した。２月24日現在、九州全域で24店舗をリニューアル。八幡西店を皮切りに、春日、太宰府、久留米、直方、筑紫野と福岡郊外での地盤を固め、次に県外店舗に着手。ぐるりと遠方を回りながら、タレントをスーパーバイザーとして起用したCMや立て続けのリニューアルオープンで「B・B」ブランドの浸透を図り、満を持しての香椎本店オープンに至った格好だ。

　名前の由来は、本来的にはビックカメラとの資本・業務提携によって09年4月設立された（株）B&Bをもじったものと考えられるが、ベスト側が打ち出したロゴコンセプトでは「バーゲンセンター（Bargain center）」「ビッグ（Big）」「ベスト（Best）」「ブライト（Bright）」「バーニング（Burning）」を表すという。

　ここでとくに注目すべきは、最初の「バーゲンセンター」である。創業者の故・北田光男氏は1956年１月、現在の同社福岡本店にて「バーゲンセンター」として家電販売を開始した。当時は定価で購入するのが当たり前だった家電の安売りに挑戦したのだ。北田氏本人によれば、「メーカーや地元業界の村八分にあい、12年間におよぶ辛酸をなめた。しかし、消費者からの圧倒的な支持を得て事業は順調に伸展した」という。

　ところが、あるとき「経営の神様」故・松下幸之助氏に呼び出された光男氏は、「"バーゲンセンター"では値引き販売を強調したネーミングやからアカン。わが社の商品を出すには抵抗がある」と告げられた。そこで「B」を残した「ベスト電器」とすることに決めたという。

　実は、あまりにもしがらみが多くなってしまった「ベスト電器」のカンバンから脱却し、「B・B」という苦し紛れの安売り店舗を展開することは、決して創業者・北田光男氏の遺志への原点回帰ではなく、むしろ脱却を志向しているとも言える。考えられるのは、松下電器が「Panasonic」として松下氏からの脱却を図ったのと同じように、ベストも「B・B」として北田氏からの脱却を図るというシナリオだ。この場合、「ベスト電器」という名前はこの世から消えることになり、またひとつ、福岡から「老舗のカンバン」がなくなることになる。

　過去、同社に勤めていた元社員A氏は次のように語る。「B・B香椎本店は、初日は繁盛していたが、うまくいかないだろう。なぜなら、家電量販店はすでに飽和状態であることが懸念されるからだ。商品価格が高いという、ベストの負の企業体質を本当に一掃できるのだろうか。本当に、消費者目線にたった営業ができるのだろうか。飽和状態の家電業界はもっと再編されるだろう。ベスト―ビックの連合体がエディオンやヤマダに吸収されるのも、なきにしもあらずではないだろうか」。

【大根田　康介、流通取材班】

COMPANY INFORMATION
代　表：小野　浩司
所在地：福岡市博多区千代6-2-33
設　立：1953年9月
資本金：318億3,278万円
年　商：（10/2連結）3,456億1,900万円

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