<お客第一主義でまずは自分の城を守る>
中村 ところで、今年の中洲はどうなりますかね。
藤堂 あたしはこの城を守ることで必死ですよ。何でもそうだけど、まずは自分がしっかりしないと。あたしがしっかりしていたら、せいぜいうちにいる100人近いスタッフは安泰じゃないですか。それで、みんなに「お客さんを大事にしなさいよ」と、ミーティングの時に言うんです。
「いかに貧乏そうな格好して、金がないと思うても分からんとよ。あたしなんかお金のないお客さんにいっぱいあたってきたけど、お金がない人は知恵がある。知恵がある人は『飲みたい』って思ったら、飲める人を探して来るとよ。金払う人を」って。
中村 分かる、分かる。僕も最初にここに来た時、興奮しましたもん。行きたくて、行きたくて、仕方が無くてね。でも自分じゃ来れないじゃないですか、自分の小遣いじゃね。ここはやっぱり、サラリーマンにとってのひとつのあこがれでしょうね。お店の従業員のみなさんへ、必ず守らせているママとしてのコンセプトって何ですか。
藤堂 そうですね。こういう仕事でも、自動車会社に勤めている時でも言っていたことは、「遅刻をするってことは最低よ。あなたたちは遅刻代を引かれるから、それでいいと思うかもしれないけど。自分の大事なお客さんが、あなた40分遅刻している間に帰ったら、信用なくすとよ。あたしが何のために早い時間におるね。あたしはもう7時半過ぎたら本店におるよ。それでこっちが忙しくなったらすぐ来るよ」って。やっぱり遅刻をしないことと、余計なことを言わないこと、お客さんの秘密をね。
それとお客さんにもあたしたちは教育するんですけど、飲み代っていうのは、きれいに使って、きれいに払えって言うの。ないならないって最初からね、「5万円しかないけん、5万円でしてくれ」と、言いなさいって。飲んだ後で「高い」とかケチくさいこと言うなと。社用族っていうのは自分のお金じゃないから、景気のいいときは使えるけど、景気の悪いときは使えないじゃない。それはそれで、こっちもちゃんと見てあげればいいと思うんですよ。経営者で自分が会社を動かしている人は「これだけの器(店構え)で、これだけの従業員がいて、これだけの女の子が揃ったら、そりゃあ『座って2万円』は当たり前よね」となるわけです。銀座だったら座っただけで5万円ですよ。だから東京のお客さんは「安いなあ!」って言うんです。
でも今、福岡でうちのような店じゃなくても、2万円とる店はザラなんですよ。キャバクラでも時間で4万円になります。お客さんも、そのことはしばらく行けば分かるんです。
中村 いやあ、しかし面白いね。博多弁でしゃべれるというのがいいね。なかなかね、分からん人たちが多くってさ。やっぱり分かる標準語よりも、分からなくても生で聞いたほうがいいですね。
藤堂 やっぱりマスコミが悪いと思うけど、何でもかんでも標準語やないですか。あたしなんか、東京行ったら標準語はもちろんとして、関西に行ったら関西弁、遊びに行くのはその地方の方言が楽しいわけですよ。でも、そういう女の子がいないの、最近。
中村 だから博多弁聞きたかったら、やっぱり藤堂ママんとこ来なきゃいかんばい。
藤堂 なかなかそれがね...。博多弁しゃべらん人の前じゃ、しゃべりにくうなってきた。東京から来たお客さんに「そんなこつじゃ、あんた! 腹かくよ!(怒るよ)」って言ったら、「(腹を掻いたら)血が出るよ」って言われるから(笑)。
【文・構成:長丘 萬月】
中村 もとき (なかむら もとき)
1941年7月10日、福岡市生まれ。西南学院大学商学部卒。大卒後、RKB毎日放送に入社。若者向け深夜ラジオ番組、夕方のワイド番組などで人気を集めた。RKB退社後、フリーとなり、99年4月よりKBCの「中村もときの通勤ラジオ」のメインパーソナリティーとなった。通勤ラジオ終了後は、アナウンサー時代から数々のコンテストに入賞した腕前を持つ写真業を本格化させる。
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