4月に行なわれる福岡県議選で、福岡市内の選挙区から民主党公認で出馬を予定している候補者陣営に、公職選挙法違反の疑いが浮上した。
疑いが持たれているのは、昨年夏の参院選福岡選挙区に立候補し敗れた堤要氏陣営。同陣営は、昨年11月に行なわれた福岡市長選の期間中、吉田宏前市長への投票を呼びかける電話勧誘を行なう際、その運動員を時給700円のアルバイトとして募集をかけた。電話作戦実施の指示は、吉田宏前市長陣営を取り仕切っていた福岡市議会議員からだったとされ、民主党県連所属の県議、市議をはじめ統一地方選挙の立候補予定者らは、自身の事務所などで電話作戦を行なっていた。
その際、堤氏の事務所はスタッフが足らず、やむなくアルバイトを使った電話作戦に踏み切ったという。民主党関係者によると、同行為については同党県連内でも問題とされた。NET-IBニュースは、電話作戦要員募集のため、堤氏から依頼された関係者が送ったとされる募集メールを入手した。
また、電話勧誘が行なわれたとみられる2010年11月11日、堤氏の後援会事務所入り口に、「荷物は403号(堤氏の別事務所)に預けて下さい」(画像参照)と、運動員への指示と思わしき貼り紙がされていたことを確認している。一方で、複数の関係者から証言も得ており、堤氏陣営が運動員を金で雇って、投票を呼びかける行為に及んだ可能性は否定できない。また、時給700円という金銭契約の話が責任者の知らないところで勝手に進められたとは考えにくい。
堤氏陣営の行為は、公職選挙法第221条の禁止行為に抵触する可能性が極めて高い。アルバイト契約の成否に関わらず、同条6号には「前各号に掲げる行為(運動員買収など)に関し周旋または勧誘をしたとき」と書かれた禁止行為がある。ちなみに、罰則については「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」となっている。
同法221条の違反が指摘された実例では、09年10月、同じく民主党の小林千代美 前衆議院議員の選対幹部が逮捕された事件があったことは記憶に新しい。同選対幹部は、09年8月の衆院選時、選挙事務所とは別の部屋で、報酬を約束した数人の男女運動員に投票を呼びかける電話勧誘を行なわせていた。また、同選挙では、同じく民主党の山岡賢次副代表の陣営にも同様の疑惑が浮上。電話作戦を行なった運動員2名が報酬を受け取ったとして、警察による捜査が行なわれている。
取材に対し堤氏本人は関与を否定。「後援会活動を手伝ってくれるボランティアは探しているが、それ以上は知らない」とのコメント。また、前出の同法第221条6号をふまえた「募集をかけた段階で違反になるのでは?」との質問には「詳しいことまでは知らない」と答えた。
また、民主党福岡県連の吉村敏男幹事長は取材に対し、堤氏陣営から問題のメールが出回ったことについて知っていると答えたうえで、「事務員が勝手にメールをした。ひとりだけ呼びかけに応じてきたが、事情を説明し、ボランティアとして働いてもらった」と説明し、違反防止のために県連全体で勉強会を開いたことを付け加えたが、違反行為が行なわれたことを事実上認めた形。なお、同法221条6号に関する質問には、一連の行為について「実行力がなく、違反しているとは思えない」としている。
一方、福岡県選挙管理委員会は、"公職選挙法第221条6号の規定について、"仲介役"として周旋(当事者間に立って世話を行なう)または勧誘(第3者的立場から応諾するよう勧める)した場合、違反とみなされる"との見解を示した。堤氏陣営のケースでは、アルバイト募集をかけた陣営関係者が、この仲介役に該当すると見られる。
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