年間550万人が訪れ、500億円のお金を落としていく。そこから派生して生まれる周辺地域への経済効果まで、たとえば飲食店や宿泊施設、タクシーなどの交通機関、福岡の土産物屋などまで、考慮に入れるならば、どれだけ福岡のためになる施設となるのだろうか。ひとつの施設が生まれたことで人が動くという経験は、福岡に住むものならば分かっているはずだ。九州国立博物館である。
2005年にオープンした同館は、初年度で220万人の来館者を呼んだ。5年が経過して落ち着いてきたとはいっても、年間100万人以上のペースで推移している。昨年の11月には累積入館者800万人を記録した。ひとつの起爆剤が人を動かすことは実証されているのだ。
映画テーマパークという点で趣を同じくする大阪のUSJは開業から5年半で5,000万人の来園者を記録した。パラマウントの福岡誘致で550万人の来場者数というのは非現実的な数値ではなく、どちらかというと少し控えめなくらいの数値なのだ。
1万2,000人の雇用を生み出し、550万人の観光客を呼ぶ。その結果500億円の売上を得るという。考え方は理解できる。ただ、事業として成功するか否かは収支のバランスにある。どれだけ売上を計上しようと、支出がそれを上回ったらいずれ事業は破たんしてしまうものだ。
この点もERAのリサーチは考慮している。商品仕入れ、給与、宣伝広告、公共料金を引いて営業段階の利益で約130億円~150億円が見込まれている。経常段階で約100億円の黒字。ここまで計算してERAはゴーサインを出しているのである。夢のある数値ではないか。ここまでシミュレーションをした上で、山崎氏は福岡に有益な事業であると結論し提案しているのだ。
ただ、これはあくまでも予測。実際には不確定要素も現れることが充分に考えられる。思いもよらぬリスクが発生するかも知れない。何かを見落としているのかも知れない。分かっていないことがあるかも知れない。来園者単価が下がるかも知れない。この「かも知れない」が出足を鈍らせているのではないか。何よりもスタートしたらすぐにパークができあがるわけではない。土地やインフラの整備、建物やアトラクションの設置などなど、多額の先行き投資が必要になる。「かも知れない」で鈍った出足が、現実的な出費で完全に止められてしまっている、今がまさにその状態なのだ。では、具体的に夢への投資はどれくらいかかるものなのだろうか。そして、その資金はどこから得られるのか。
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