<日本人もパニック化しうろたえる>
前回の余談がある。上海に常駐しているある経営者が帰国してきた。「上海では日本にいる身内・友人たちからTELやメールで『日本は原子の灰が舞い上がる危険性があるから早く帰って来い』とせっつかれるので中国人たちは動揺して里帰りに奔走している」と話をしてくれた。これじゃー、チケットがなくなるのもうなずける。現在、成田=上海間の料金は1万元になっているとか。日本円に換算して14万円。通常の倍以上に跳ね上がっているのだ。
18日に東京へ行く用事があった。当初、最大の案件は、モンゴルから来日する同国内3番目の財閥の経営者を取材する目的であったが、キャンセルになった。「日本の商談先が地震で応対できない」という理由でオジャンになったのだ。同日夜の会食のために予約を入れていた。銀座では評判の創作和食の店だ。いつも賑わっている。「明日は心配しなくて結構です。予約されずに来訪されても席は空いています」という返事であった。これには驚いた。いつもなら金曜の夜の予約は1週間前でないと確保できないのであるが・・・。
移動日は、いつものANA7時10分福岡発に乗機する予定で飛行場に向かった。6時40分に着き手続を完了して7番ゲート前で軽食を取った。客がえらく少ない。ウェイトレスの方に聞いてみた。「通常よりも半減しているね」と投げかけた。「そうですね、半分以下でしょう。困ったことです。きのうはこれよりも悪くていつもの2割もいなかったと思います」という彼女の声は非常に暗い。
ジャンボ機に入った。座席は後方部である。前座席の方は6割の感じであったのだが、後方座席の方に来ると空席が目立つ。ガラガラという感じだ。平均でならすと40%くらいの搭乗率である。羽田で降りる際に飛行機スタッフに質問した。「お客が少なくて大変ですね」。女性のスタッフは「東京から福岡のお客さんは、そこそこいるのですが、東京へ向かう人は激減しています」と応えてくれた。「福岡と羽田、たがいにお客さんが増えることを祈っています」と激励した。
羽田空港に降りた。動く歩道が停止している。その時は気にしなかった。モノレールに乗る車内アナウンスが次のように流れていた。「計画停電に協力するために暖房はストップします」。浜松町駅構内のエスカレーターが一部、ロープが張られて使用不可になっていた。ここで初めて気づいた。「そうか!!電力消費削減の努力をしているのだ。これでは生活は難儀になるな」。
浜松町からはタクシーを使って赤坂にある弊社の東京支店に向かった。さっそく運転者さんの嘆き節を聞き取った。「東北で被災された方々の深刻な状況には同情しますが、われわれもこれでは食べていけません。昼間は人が動いていませんし、夜は9時を過ぎたら誰もいなくなります。商売になりません。ギブアップです」。10時から会議を開いた。1名は10時半に出社してきた。電車の都合がつかなかったのである。
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