これだけの大災害であるからには、来年度以降は恒久的な財源を災害復興費用に充てる手立てを準備しておかねばならない。道路や鉄道、港湾、空港、ライフラインに加え住宅などの復旧はもちろん、エネルギー消費の抑制や、新たな安定電源の確保が経済復興に欠かせない。そのためにはぼう大な資金需要が生まれるはずだ。国民全体が協力しなければ、この国難的状況を突破することはできない。その意味では、全国民で広く財源を負担する「復興税」の導入も検討に値しよう。
この際、政府、与野党とも、今回の事態を「1千年に1度の国家的危機」と受け止め、政治休戦を旨とし、一丸となって緊急対策に取り組むべきだ。あらゆる人的、技術的可能性を排除せず、国際的な支援体制をバックに、危機を乗り越えねばならない。政府の緊急対策災害本部には、野党の幹部も参加し、情報を共有したうえで、特別立法を含め、必要な知恵と政策を総動員すべきである。すでに政府、与野党の責任者が参加する対策協議会も発足しているが、より一層スピーディーな現場対応が求められる。
結果的に、菅内閣が陥っていた「3月危機説」は吹き飛んでしまった。わが国が直面していた政治的危機は、今回の大震災により日本の危機に変質した、と言っても過言ではない。与野党は政局がらみの駆け引きや、政治とカネをめぐる非難合戦を一切棚上げし、挙国一致体制で復旧と復興に邁進すべきであろう。野党が主張してきた衆議院の解散や総選挙は当面先送りにせざるを得ない。
かつてない大災害に直面し、「機能不全の政治」というような批判を受けないためにも、国会は復興に向けて全力を挙げねばなるまい。菅内閣が強引に推し進めようとしてきた、環太平洋経済連携協定(TPP)や社会保障と税の一体改革なども、当初の予定通りには進めることは難しくなってきた。もとより問題が十分に審議されてこなかった経緯もあり、この際、優先順位は下げざるを得ないだろう。
それより、原発やエネルギー政策、ひいては災害対策全般を徹底的に見直すことで、国内のみならず、海外に向けても日本の安全と責任ある対策をアピールするチャンスである。公的資金の注入を視野に入れ、また、海外からも資金調達を大胆に図り、早急に国家再建ビジョンを打ち出す必要がある。日本国のありようを一新するほどの創造的なデザインが求められる。
実は2008年秋のリーマン・ショック以後に策定した「金融機能強化法」に基づく公的資金の枠はまだ11兆円以上残っている。信用金庫や信用組合も中央組織を通じた資本支援の仕組みがある。地域経済の苦境を押さえ、復興時の企業向け融資に臨機応変に対応するには、こうした公的資金の枠組みをフルに活用することも重要となる。
【浜田 和幸】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。
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