ところで、政府は茨城県産のほうれん草と福島県産の原乳から厚生労働省が定めた暫定基準値を上回る放射能が検出されたと発表した。こうした食品は食品衛生法に基づき出荷できない。一方、福島県の一部の水道水からは原子力安全委員会が定める基準値を超える放射性ヨウ素が検出されたとも発表されている。その後、東京の水道からも同様の検出が見られているとのこと。
野菜や原乳、そして水道水から基準値を上回る放射能が検出されたことは大きな懸念材料となるだろう。政府は「直ちに健康に影響がでる数値ではない」と、冷静な対応を求めているが、風評被害を含めて、その影響は無視できない。今回、ほうれん草より検出された放射性ヨウ素は放射能が半減する期間が約8日間と短いが、原乳から検出された放射性セシウムは半減期が約30年と長い。
何しろ、放射性物質が食事を通じて人体にどのような影響を及ぼすかについては確たるデータがないのである。動物実験はあるものの、人体への短期、長期の影響についてはほとんど信頼できる調査結果は得られていない。放射能被害が遺伝しないことは明らかなようだ。とはいえ、今後の食の安全をいかに確保するのか。補償の問題も含めて政府の対応が求められる。
加えて、こうした危機的状況下であるからこそ、防衛についても即応体制を堅持しておかねばならない。というのも、現在進行中の救援、支援体制は長期化するものと思われる。現場で活動中の自衛隊員の疲労度を考えても、交代要員としての予備役の活用が欠かせないはず。すでに招集がかけられているが、20万人体制の自衛隊から10万人を投入しているわけで、予備役との連携プレーが重要になってくるだろう。
実は、松島の航空自衛隊基地では避難指示が間に合わず、支援戦闘機18機が損傷するという事態を招いてしまった。これはわが国の防衛上、大きな穴が生じていることを意味する。その意味でも、米軍との統合体制を円滑に維持する必要がある。
中国やロシアからも支援の申し出が相次ぎ、実際、緊急支援部隊や救援物資が続々と到着している。中国の消防車メーカーからは62メートルのアーム装備のポンプ車を無償提供したいとの連絡もあったほど。頼もしい限りであるが、その一方で、中国国内では一部の過激分子が「大震災の混乱に乗じ、尖閣諸島を奪取せよ。今こそ中国の好機」(「東方日報」3月19日)との暴論を唱えており、あらゆる側面から備えを緩めるわけにはいかない。
【浜田 和幸】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。
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