エンターテインメント。これにはひとつ、とても大きな要素が潜んでいる。楽しむ者と楽しませる者の二者が必要ということだ。山崎氏が提唱している、このプロジェクトが他と違う点は、まさにここにある。楽しむためだけの場所ではなく、楽しみを生み出す人を育てることにも目を向けているのだ。人が育てば産業的な裾野はさらに広がるという考えである。
「パラマウントの映画テーマパークは大きな柱ではあるけれども、すべてではありません。靴が片方だけで機能しないように、もうひとつの側面を満足させなくては、この計画は完全とは言えないのです。テーマパークと同時に人を育てる施設を併設すること。これで楽しみたい人だけではなく、新たな楽しみを具現化できる人や、夢を持った人を育てて社会に送り出すことができるようになります」
UCLAのエンターテインメントエクステンションの併設である。世界トップクラスの映画コンテンツテーマパークと同時に世界トップクラスのエンターテインメントが学べる場所の相乗効果を狙う、それがこのプロジェクトの全貌なのだ。
街には色があったほうがいい。千年の都が京都であり、町工場の王国が大阪であり、先進国際都市が東京であり、古来の港町が神戸であるように。福岡は今、一言で表す言葉がない街という現状にある。逆に言えば、色がついていないのだから、これから染めることができるとも言えるのだ。ハリウッドの「今」が学べる施設をつくること。そうすることで、福岡はエンターテインメントが生まれる場として、日本の都市の中に確固たる地位を築くことができるかもしれない可能性が生まれる。テーマパークだけの企画では、この付加価値は生まれないだろう。遊ぶ場所というのは国内を見わたせばたくさんある。東京ディズニーリゾートも、大阪のUSJも、小規模な遊園地も。けれども、世界水準の最先端エンターテインメントの技術が学べる場はない。それが国内で学べるのならば希望する若者は全国、もっと広い可能性を考えるなら、アジアから集まってくることになるかもしれないのだ。
「夢を持っている若者たちが、夢を実現できる場をつくることも社会の大きな役割ではないでしょうか」
山崎氏によると、このプログラムをアメリカから引っ張ってくることで生まれる副次効果は、日本とアメリカとの文化の架け橋が生まれることだという。
【柳 茂嘉】
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