1,080億円もの大金、今の世のなかでは、そうそう簡単に得られるものではない。どうやって資金を調達するのか。計画によると4つの方法が考えられている。
ひとつ目はプライベート・エクイティ・ファンド。機関投資家や個人投資家から投資ファンドとして調達する方法である。全体の13%にあたる約136億円を、この方法で得るとされている。
ふたつ目は事業の採算性に対して融資するプロジェクト・ファイナンスによる借入金。金利3%で金融機関から借りることを計画している。金額は全体の62%に相当する約682億円。
三つ目はキャピタルやリースを活用した方法。これが60億円。
最後に公的資金で202億円が想定されている。以上の合計で1,080億円となる計算だ。
雲をつかむような話である。実際にそれが可能なのか。ファンドを形成することは、国際的に広く募れば可能かも知れない。問題は融資である。全体の過半を占める借り入れがうまくいくかどうかが計画のゴーストップを決めるといっても過言ではない。今のご時勢で、これだけの規模の借り入れが可能なのだろうか。
本計画と類似した映画テーマパークであるユニバーサルスタジオジャパン(USJ)のケースを顧みてみよう。USJの開発費用は、およそ1,700億円にのぼったとされており、その6割以上をプロジェクト・ファイナンスで得たといわれている。銀行などの金融機関複数者と企画開発担当の第三セクターとが協議して融資を得た。
しかしながら、USJの場合、大手家電メーカーである松下電器産業(現パナソニック)がリーダーシップをとったり、大阪市が誘致のための会社へ22%出資したりと、地域の発展を願う人や企業がこぞって参加している点が大きく事業化へ貢献していると考えられるのである。社会的信用の高い大手企業や日本第2の大都市・大阪市が原動力となって積極的に推し進めたことが、融資を実現させたとも言えるのだ。
一方で、福岡パラマウント計画はどうだろうか。聞こえはいい。実現したならば将来に明るい兆しが見えてくるかも知れない。けれども、大阪の場合と圧倒的に違うのは、声のボリュームがまったく違う点にあるのだ。実現を本気で信じているのは、今のところ山崎氏とその周辺くらいのものである。市も沈黙している。これでは、融資はもとよりファンドを募ることも困難なものとなるのは明らかだ。
繰り返しになるが、今の福岡には他都市と比べて決定的に違う「何か」がない。つまり来福する「決め手」がない。お金は人についてくるもの。人が来なければいずれ、ともなりうる。今の状態を悪しとするなら、また、他に福岡に特色をつけられるアイデアがほかにないのならば、せめて是非の議論だけでも始めてみることが必要なのではないか。まずは声を上げ、そして声を上げたなら次は手を挙げること。それもスピーディに。福岡がアジアのなかに埋没するか否かは、未来を憂う声の大きさにかかっているのだ。
【柳 茂嘉】
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