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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (105)
経済小説
2011年4月 3日 07:00

平成21年2月「大手か地元か」

<事業譲渡の入札>

 私は事業譲渡の手続を進めるに当たり、他の取締役とも情報を共有しながら進めた。しかし公正な入札が求められる交渉ごとであったため、社員には一切状況を口外していなかった。黒田会長が、あくまでも希望として地域再生ファンドとのタイアップによる再生を図りたいということを皆の前で述べており、これに対しては、私もそうあってほしかったが、そのためには誰かが新会社を設立し、地元ファンドと組んで入札に参加し、勝たなければならなかった。しかし入札は公開によって行なわれ、資本力のある中央の大手も参加していた。そのため体力勝負となることは不可避であり、地元のファンドが必ず勝てるとは到底いえなかった。
 しかも社員にもいろいろな形でデマが流れるのか「地元公益企業の●●が入札に参加するらしい」という噂に対して、そうなれば開発業も再開できるのではないかなどの期待が集まったかと思うと、後に「●●は降りたらしい」という噂が聞こえると、改めて落胆したり、というようにうわさに対して一喜一憂するような動きがあった。同業大手に買収された場合は、本社が移転させられたり現業担当者以外もすべて現業に配置転換されるだろう、というような流言飛語も飛び交った。

一次入札には5社が応じた... 一次入札には5社が応じた。全国規模の大手が2社、地元同業が2社、それからオーナーズクラブが入札に参加した。オーナーズクラブの面々が、民事再生後、幾度となく集まってDKホールディングスに対してどうしていくかについて話し合いを持っていたことは先に述べたが、オーナーズクラブの中には不動産管理に詳しい方もあり、このような人たちを中心に今後も地元にあってオーナーが安心できる会社に物件を任せたい、そのためにはオーナーが会社を新設し、その会社がDKホールディングスの事業を引き継ぐ、というプランが形成されていた。おりしも、福岡ではDKホールディングスと類似の会社が、ひと足先に民事再生を出していたが、管理物件はちりぢりになってしまっていた。これに対しDKホールディングスのようにオーナーが立ち上がって管理会社を支援しようとするような例は他になく、業界では大いに話題となった。
 このオーナーズクラブを資本面で支援しようとしていたのが地元の企業再生ファンドであるナンバショットインベストメンツであった。

 しかし譲渡先はあくまでも公正な入札で決定することとしていた。一次入札を通過したのは上位3社だった。なぜ、3社を通過させたのかというと、仮に2社を通過させた場合は、その後1社が脱落すると、二次入札が競争にならなくなってしまうからである。
 二次入札に進んだ3社の中には、オーナーズクラブが設立した株式会社セントラルレジデンスも含まれていた。他の2社は、全国規模の大手1社と地元の管理会社1社である。私はFAとともに3社に対して公平にデューデリジェンスの機会を設けた。
 大手は、会計士や弁護士を含めたチームを編成し、徹底分析する姿勢で臨んできた。地元社は、社長が事務の女性一人連れてきただけで、事務の女性に物件一覧をパラパラと閲覧させ、物件が優良かを確かめさせたほかは経営陣へのインタビューに絞り、あっさりとした調査を行なった。しかし質問内容からは事前に非常にインフォメーションパッケージを読みこんでいるように思われた。ナンバショットに支援された株式会社セントラルレジデンスも、「DKホールディングスはもと上場会社で、直近は財産評定などで公認会計士のスクリーニングもされているから」と、資料分析中心で対応してきた。

(つづく)

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