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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (113)
経済小説
2011年4月11日 15:25

<事業譲渡の実務>

株式会社DKホールディングスと株式会社セントラルレジデンスの間で、事業譲渡契約書が締結され... 3月中旬、裁判所の許可を持って発効する、という特約つきで、株式会社DKホールディングスと株式会社セントラルレジデンスの間で、事業譲渡契約書が締結され、3億円弱で不動産管理事業を譲渡することが決められた。裁判所からは文書と説明会による債権者からの意見聴取を行なったうえで結論を出す、といってきていたが、私は裁判所の許可が下りるのを待たず事業譲渡の実務を進めることとした。私は、過去の事業譲渡など経験したことはなく、非常に不安であったが、そのようなことは言っていられなかった。

 事業譲渡の実務としては、下記のようなものがある。

1.全体のスケジュールの検討

 当社の場合は、3月中旬に事業譲渡契約書を締結し、4月末日基準により5月1日に事業譲渡を実行することとしていた。基本となる譲渡額は入札のうえ、事業譲渡契約書に盛り込んであったが、契約書上は大まかな承継対象勘定科目を記載してあるにすぎない。なぜならば、譲渡予定の事業は現在運営中の事業であり、各科目の相手先や金額は随時変動するからである。

 そこで、まず譲渡基準日の継承対象債権債務の額を把握する。そこに入札で合意した営業権(のれん代)を加味することで、当日セントラルレジデンスからDKホールディングスに振り込む現預金の額を決定する。ところが、経理実務としては、4月末のBS明細を4月末に把握することは無理である。そのため、3月末の資産負債譲渡は、3月末BSを基準として便宜上行ない、後に4月末のBSを締めた後の6月末日に差額を精算することに決めた。

2.承継する資産及び負債の確定

 承継する資産及び負債を、科目別・相手先別金額のレベルで確定する。
 当社の場合は、毎月下旬から月末にかけて入居者から集める家賃が2億円ほど入ってくる。これらを、翌月20日にオーナーに送金する。これらは月末時点では、資産の部の現預金と、負債の部の家賃預り金として計上されている。そのため、月末基準で継承させる場合は、月末時点の家賃預り金を継承し、それに見合う金額の現預金も継承することになる。その他、承継する資産としては不動産管理事業に関する売掛金・家賃未収金など、オーナーに差し入れている敷金など(大半がかつての借上敷金で未精算のもの)、固定資産・情報システムなど、事務所を借りるために差し入れている敷金などである。負債としては、上記の家賃預り金のほか、従業員の退職給付引当金と取引先に対する買掛金・未払金も継承した。

 これらの結果、現預金をいくら継承するか、が譲渡側・譲受側双方にとって最大の関心事であった。上記のように家賃預り金相当の現金は継承する対象であったが、それ以外の各種の債権債務を継承し、なおかつ譲受側では入札時に合意した営業権を計上し、その場合に継承する現預金はいくらになるかを算出する流れとなった。不動産管理事業では、民事再生以降、現場が混乱したため、なかには実態がつかみづらい科目もあり、そういう科目は大雑把に決める方法を取らざるを得なかった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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