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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (114)
経済小説
2011年4月12日 11:02

 (前回の続き)事業譲渡の実務について。

3.人事労務関係の継承
 人事労務関係では、従業員全員の継承を予定していたが、事業譲渡では、他の契約関係の継承と同様、従業員の継承についても、契約し直すということになる。つまり、対象者はDKホールディングスを退職し、その後セントラルレジデンスに入社する手続となった。
 そのため、移籍説明会を開催し、新社長より経営方針および待遇について説明し、総務部にて一人ひとりから転籍同意書を取得した。当社の場合は、新会社として転籍により若干の手当を増強する程度で、基本的にはDKホールディングスでの民事再生後の雇用条件を継承したが、転籍に伴い基本給の見直しなどがある場合は、それを確定した合意書を締結しなければならないだろう。また、この時点でDKホールディングスを退職して失業した場合は、社会保険上の退職理由は会社都合となるとのことであった。退職給付債務は、セントラルレジデンスに継承することとしたが、これは、もし譲受側が大手企業だったら、退職給付債務は移籍時点で支払ってしまい、そこから新たに退職金を引当していくやり方を取るだろうと思う。

4.規程・マニュアルなど
 譲受側は、受けたその瞬間から事業運営が始まるため、就業規則、給与規程、経理規程、稟議決済基準などは当初から必要になる。当初はDKホールディングスのものを踏襲し、その後、必要に応じて改変していくこととした。

5.システムの移行
細かい項目を挙げるときりがない... 現代の企業活動は情報システムを抜きにしては語れないため、事業譲渡に当たっての業務は多い。会計システム上は、完全に移行が済むまでの期間は、新旧2社が並行して走ることになる。当社の場合は、業務システムと会計システムを直結していなかったため、業務システム(不動産管理システム)はそのまま使用し、そこから出てくる帳票に基づく仕訳は、内容により、新旧いずれかの会社で仕訳する、という運用を行なった。その他システムに関連したところでは、業務システムに使用する帳票用紙などを新しくする、帳票に印刷される会社名を変える、会社ホームページの社名を変えるなどきめ細かい対応が求められた。

6.契約の再締結
 各取引先と、新契約を締結する。まず、継承するべき契約書については各部でリストアップし、それを事業譲渡契約書の別紙として添付したが、当社の場合は、存在する契約書を把握することからして困難であった。新会社への事業譲渡にあたっては原則として地位継承契約を締結することによった。入居者に対しては、新たに数千人の入居契約を締結しなおすのは現実的ではないため、弁護士と相談のうえ通知文を持って代えた。

7.その他の移行
 電気・ガス・水道・保険などの名義変更、事務所看板・広告看板などの張替え、車両などの登録変更など、細かい項目を挙げるときりがない。

 事業譲渡の作業としては以上のような内容があるが、これらの作業に取り掛かる前に、事業譲渡の枠組みに併せて当社の状況を把握し、当社の場合は、どう当てはめていくかポイントを整理しなければならない。たとえば債権債務の継承を進めるためには、当社の関係先を属性別にリストアップし、各属性単位で、どのような勘定科目の継承が発生するのかを把握し、属性別の譲渡方針をまず整理しないと実際の作業に行き着くことができない。当社の場合は、オーナー、入居者、取引先といった属性があり、そのなかでもオーナーは旧借上、一般管理、PMでそれぞれ定型的な仕訳が異なっていた。また、当社の場合は、すでにDKホールディングスが事業を行なっている間に解約となった物件に関する債権債務は継承せず、もっぱらDKホールディングスで残る債権を回収するように整理し、おおむねうまく対応できたが、なかには後から修正したケースもあった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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