今回の福岡市議選において、定数9をめぐって16人の候補者が火花を散らした早良区。買い物客が集まる西新周辺は、各陣営の選挙カーが所狭しと駆け回った。そのような状況下で、多くの陣営スタッフ、とくにウグイス嬢を困惑・かく乱させた陣営があった。
「○○候補の健闘を祈ります!」、「お互いがんばりましょう!」。よっぽど敵対していない限り、異なる陣営の選挙カーがすれ違う際、そうしたやり取りが行なわれることが多い。有権者の手前、声をかけられたほうも無視するわけにはいかないからだ。
ところが、昨年(2010年)11月の福岡市長選に続き、再度、福岡市政に挑戦した新人・飯野健二氏(49)の選挙カーは、至近距離にならないと識別不能という"ステルス性"に優れていた。飯野氏が代表を務める地域政党「福岡維新の会」の幹部によると、「予算の都合で、やぐらを作ることができず、ポスターを車体の横に貼ったが・・・。遠くからでは誰の車か分かりづらいはずだ」という。
"やぐら"とは、候補者の名前などが書かれた看板を選挙カーの屋根のうえに設けたもの。たいていの選挙カーは設置しているので、目にしたことのある人は多いはずだ。飯野氏の選挙カーが軽自動車であったことも、ステルス性を向上させた。渋滞時、前の車が大きい場合は、陰に隠れてしまう。一方、"やぐら"を節約した分、大音量の高性能スピーカーを2基設置できたという。
飯野氏の選挙カーから、声をかけられた陣営は混乱に陥った。「どこからか声がするが、姿が見えない。どこの陣営だ?」。返事を速やかに行なうため、マイクを握るウグイス嬢は、窓から顔を出し、四方に目をやらざるを得なかった。
なお、飯野氏は、1,147票を獲得し落選。今後の政治活動の予定については、「福岡維新の会幹部と相談のうえ、新たな道を検討したい」としている。
【山下 康太】
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