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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (115)
経済小説
2011年4月13日 13:33

 それに事業譲渡の税務面についても意識しておかねばならない。

 事業譲渡では、DKホールディングスの不動産管理事業上の債券債務をセントラルレジデンスに継承したが、この継承は税務上「時価」によることになっている。適正な時価によらず資産を譲渡した場合、一方には超過利潤が発生し、もう一方には不当な利益供与をしたこととなって税務上否認されるおそれがある。とくに固定資産などは車両、サーバー、電話加入権だけでなく事務所で使用している机や椅子に至るまで多彩な物件が計上され、これらを一括で●●百万円、というように値決めになっていたが、譲受側はこれらを譲渡側の簿価で計上するのではなく、中古取得の物品として計上しなければならない。このため、明らかに市場性があり換金可能な自動車やサーバーなどは下取り業者の見積やWEBでの買取り情報などを参考にして計上する一方、簿価はあるものの換金性が薄いもの(中古家具・PCなど)は費用計上してしまい資産計上は行なわない、などの対応をとった。これにより税務上のリスクを回避するとともに、新会社での管財事務の簡略化を図った。

 システム上の最大の課題は、不動産管理システムをきちんと移行させることであった。当社は家賃や水道代、共益費というような月例費用の入居者からの収集とオーナーへの送金を、システムを利用して行なってきたが、事業譲渡とともに新会社の銀行口座を稼動させ、その入金情報を不動産管理システムで随時把握できるようにすることがとりわけ重要であった。このため新会社を設立すると同時に、かなり早い時期から銀行口座の開設に動いていたが、銀行によってはセントラルレジデンスを倒産会社であるDKホールディングスの仲間とみなし、口座開設には応じるものの企業活動のためには不可欠なWEBバンキングなどの利用については断るところもあった。ご迷惑をかけたゆえ止むを得ないこととは思ったが、まったく別の会社であるセントラルレジデンスにも、当社の倒産の累がおよぶのには当惑せざるを得なかった。もちろん、一方では進んで口座開設を受け入れてくれる銀行もあり、捨てる神あれば拾う神あり、といったところである。l

気がつけば桜が満開になっていた... ともかくも4月末の事業譲渡を実行することで、今DKホールディングスに在籍している社員を全員転籍させることができる。そうすれることで、DKホールディングスには不動産とそれにまつわる負債だけが残り、残った取締役だけでこれら資産の処分を進め、年内を目標に債権者への弁済を実行することになる。
 平成20年11月の民事再生の申立以来、約半年間いつ終わるとも知れぬ長いトンネルを走ってきたが、ようやく出口の明かりが微かに見えてくるのを私は実感していた。気がつけば桜が満開になっていた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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