中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
中国では4月7日からガソリンや軽油が一斉に値上がりした。値上げは今年に入って2度目だ。93号汽油(レギュラーガソリン)が1リッターあたり7.5元(日本円で約97円)、97号汽油(ハイオクガソリン)が1リッターあたり8元(日本円で約104円)となった。
これは国際的な原油価格の高騰を受けた措置であろうが、やっとで車を買った一般市民にとっては苛立ちを隠せないようだ。「今の中国人は世界最低の給料で、アメリカより高いガソリンを買っている」と嘆いているという。
たしかに、中国の地方都市では平均的サラリーマンの年収はようやく日本円で50万~60万円ほどになってきたのだが、ガソリン代は原油価格の高騰に比例して、この3年間で5割も値上がりした計算になる。市民ははじめて車を買ったものの、車を使って出かけることをためらっているという。
中国は世界第5位の産油国であるが、一方でアメリカに次ぎ世界第2位の石油消費国でもある。中国は1993年より石油純輸入国に転じ、その輸入額は年々増え続け、いまでは国内の石油生産量の2倍以上の石油消費国となったため、年間2億トン以上を輸入に頼らなければならなくなった。
原油価格の高騰とともにインフレ懸念も高まっているようだ。
中国の地方都市では地下鉄など公共交通機関が整備されていないため、移動にはタクシーがよく使われる。青島では昨年12月、それまでの燃料チャージを吸収する形でタクシー代が値上げされたばかりであるが、今後さらに値上げが予想されている。それでもタクシーの初乗り料金は9元(日本円で約110円)ほどだから、日本に比べたらはるかに安い。
しかしながら、さまざまな物価の度重なる高騰は国民の消費マインドを冷めさせ、所得倍増計画を掲げたばかりの中国政府にとっては厳しいカジ取りとなるであろう。中国政府の進めるインフレ抑制策が功を奏し、賃金上昇を上回る物価の高騰が避けられるかどうか注意深く見ていく必要がある。
【杉本 尚大】
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