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経済小説

天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (116)
経済小説
2011年4月14日 14:10

平成21年4月「事業譲渡」

<許可下りる>

 説明会後の4月中旬、裁判所は正式に事業譲渡の許可を出した。
 その後、裁判所はこの事業譲渡の旨を官報に公告した。これは、そもそも主たる事業の譲渡は会社法上、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要であるが、民事再生法による事業譲渡許可の場合は、株主総会の特別決議に代わるものとして裁判所から株式に書面を送達する。しかし当社の場合は、もと上場会社で株主数が800人と多かったので、送達に代えて公告を行なった、とのことであった。

<最後の食事会とオーナー説明会>

 事業譲渡の許可が下りる前週、当社は二つの説明会を行なった。ひとつは社員説明会、もうひとつはオーナー様への説明会である。

 社員説明会では、先に述べた新会社セントラルレジデンスへの転籍のためセントラルレジデンスの経営方針および待遇などの説明を行なう。黒田会長は冒頭挨拶を簡単に済ませ、
「後は石川君から」
 と私にマイクを渡した。私は出席者に向かって経緯説明を始めた。
「皆様お疲れ様です。社員の皆様には11月の民事再生以来、大変なご苦労をかけてきました。給与を切り下げさせていただいたうえ賞与の支給も見送らざるを得ず、大変申し訳なく思っております。また申立と同時に、オーナー様のつなぎとめや入居者からの問い合わせ対応、そして債権届出や不動産の売却など、激務をこなしていただいて、何とか春を迎えることができました。本当にお疲れ様でした。管理物件が当初の目標より減少し、取締役が1名辞任するという残念なことになりましたが、それでも他社と比べれば相当の成果であると考えております」

社員説明会では...「なぜ7割近い物件を確保できたかというと、社員が一丸となって"管理物件こそビジネスの基盤である"という決意をもってオーナー様をつなぎとめたからであると思います。管理戸数が目標を下回ったことで、民事再生前の給与水準に戻す、ということは残念ながらできませんでした。しかし、それでもきちんと事業をやっていけば社員に給料を支払っていけるようになっております」

「すでに新聞などで報道されておりますが、現在、新しい会社ができ4月末までにDKホールディングスの事業を移すことを予定しております。新会社は社名を株式会社セントラルレジデンスといい、牧田部長が代表取締役とし、稲庭部長が専務取締役として経営に当たります。オーナーの代表としてKさんも社外取締役として入ります。そして、地域の企業の再生を支援しているファンドであるナンバショットインベストメンツが、新会社に3億円弱を出資してDKホールディングスの不動産管理事業を買い取ります。その裁判所の許可も4月10日には正式に降りることとなっております。ナンバショットからは、今後取締役が入ってきますが、あくまでも非常勤の予定であり、原則としては、牧田社長・稲庭専務で自主的に経営してゆくことになります」

「DKホールディングスが今持っている土地や銀行借入は新会社に移らず、そのまま残ります。そうすることで新会社は借金のない身軽な会社になります。そして現在在籍している正社員は、この新会社セントラルレジデンスに移籍して、これまでどおりの本社で、これまでどおりのシステムで、これまでどおりのオーナー様の物件を管理してゆくことになります。全員がこれまでどおり仕事ができる、ということでベストの事業譲渡先であると考えております」

「一方で旧会社のDKホールディングスは、新会社に不動産管理事業を売却して入ってくる約3億円と今後残った土地や有価証券を売却代金で、債権者に弁済を行なったあとに、清算に向かうこととなります。この旧会社の残務処理には、牧田部長・稲庭部長を除く役員が当たることとなります。今日は、新会社の牧田新社長から、経営方針の発表があります。また、総務より移籍手続きに関する説明がありますので、内容をよく聞いておいて下さい。その後、DKホールディングスとして最後の食事会もありますので、お楽しみいただくようお願いします」

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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