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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (118)
経済小説
2011年4月16日 07:00

<事業譲渡>

 事業譲渡は大詰めであった。4月末日基準のBSに基づく資産・負債継承目録は経理の課長が退職したあと、もっぱら私が作成し、新会社の牧田社長・稲庭専務と相互確認をしていった。また、各部署の実務の進行については、週に1回の事業譲渡進捗会議を設け、そこで懸案の報告や課題の進捗確認を行なっていった。

 従来、4月末基準をもって4月末日付で事業譲渡を実行することとしていた。そして新会社の決算は、4月までが賃貸業界の繁忙期であることを意識して、4月末決算とした。ところがその場合は、税務上4月30日の1日をセントラルレジデンスで営業しなければばらない、ということが判明した。そうなるとセントラルレジデンスの4月決算期の手間が激増してしまう。しかもこの4月決算期の仕入にはセントラルレジデンスがDKホールディングスから買い取った固定資産と営業権が含まれることになった。そうなると、仕入に伴って消費税1億円を納付することになる。一方、同期の売上は一日分しかないため、売上に伴う消費税と相殺しきれず、納付した消費税はほとんど満額が費用化してしまう。そこで、代理人弁護士および顧問税理士と相談のうえ事業譲渡日を変更し、「4月末日基準で5月1日に譲渡」ということにした。そのための覚書を締結することで、新会社は貴重な1億円の運転資金を手にすることができた。

<事業譲渡後を見据えて>

事業譲渡は大詰めであった... 事業譲渡の進捗に伴い、事業譲渡後のDKホールディングスの管理体制をどうするかの問題が見えてきた。事業譲渡に伴ってDKホールディングスは、役員は残るものの従業員は電話応対などに当たるパートの女性が1名、という状況であった。しかし事業譲渡で不動産管理事業が手を離れても、残った不動産の売却、サブリースを解約したオーナーからの敷金回収、DKホールディングス時代に解約になった物件の入居者からの家賃の未収金などの回収、再生債権者への弁済、これらの残る事業活動に対応する経理事務などが必要であった。これらのうち物件の売却、工事の再開、民事再生手続の推進についてはDKホールディングスの取締役で分担して実行し、そのサポート業務はセントラルレジデンスに委託することとして覚書を締結した。また、残る物件を反復的に売却していくために、宅地建物取引主任者を置くことも必要だった。そのため業務上必要な対応をするために、セントラルレジデンスの社員をDKホールディングスに出向させる取り決めも覚書に盛り込んだ。

 セントラルレジデンスの本社は、DKホールディングスが大家さんと締結していた賃貸借契約を継承することとしていた。そのためDKホールディングスの事務所をどうするかが問題であったが、私は新たに事務所を借りて再び引越しや内装で金をかけるよりは、セントラルレジデンスの事務所の一部を転借したほうがいいと考え、これも覚書を締結した。事務所の家賃は水道光熱費や社内ネットワークの使用料も含むようにして、できるかぎり必要なリソースを新たに発注する必要がないようにした。このため、セントラルレジデンス管理部のメンバーには1年半に渡り、ふたつの会社の管理業務をしてもらったことになる。

 私自身も、事業譲渡の完了まで、私はDKホールディングス本社ビル4階の管理部門の中央に机を置き、民事再生手続遂行の最前面に立ってきた。しかし、事業譲渡後のセントラルレジデンスは、上記の業務上の委託関係を除けば関係のない別法人であるため、私自身も転借したDKホールディングスの事務所に机を移し、4階の管理本部長席は新会社の稲庭専務に明け渡した。
 社員約40人に総員退艦を命じ新会社に乗り移らせ、私が大きな肩の荷を降ろしたその瞬間であった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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