今回から「北九州市小倉地区中心市街地活性化協議会」の活動内容について、少し詳しくご紹介いたします。
同協議会は、北九州商工会議所が入居するビルでもある、北九州市小倉北区の毎日西部会館に拠点を置いています。事務局メンバーは、(株)北九州まちづくり応援団メンバーとともに事務局長以下12名です。
協議会の役割は、前回お話しましたように、北九州市が策定する「北九州市中心市街地活性化基本計画」に対して、民間ベースでの協議・検討、掲載事業の実施についての確認や、民間ベースの事業計画について議論をすることにありますから、行政側と緊密な連絡を取り事業の進捗状況などを把握する必要があります。
行政側の担当は、都市計画担当課、まちづくり担当課、商業担当課ということになります。これらの担当課と月に1度のペースで連絡会議を開きながら、協議会の運営を図っていくわけです。この会議で検討から最高意思決定機関である北九州市小倉地区中心市街地活性化協議会、その下部組織である幹事会への議案を上程し、決議を得て事業が進行する仕組みになっています。
このようにして数々の事業が進行していますが、前回ランダムに列挙した事業から主要な事業を少し詳しくご紹介します。
なお、協議会で認可している事業数は、協議会が発足した2008年は、77事業、10年2月時点では103事業と膨らんでいます。このなかには、道路の整備など市のインフラ事業なども入っています。それらを除いて、中心商店街に直接関係する事業を取り上げます。
まず、09年度に完了した事業のうち、目立つのが「魚町銀天街ショッピングモール化事業」です。
魚町銀天街は、南北400mにわたるアーケードが全国で初めて架けられた商店街です。入り口に記念碑もあります。この商店街のアーケードは、通称勝山通り(国道199号)により分断されており、雨の日は傘が必要な状態でした。そこで、ここに国道をまたぐアーケードを架けようということになったのです。魚町1丁目商店街振興組合と魚町商店街振興組合が事業主体となり、活性化基本計画の認定を受け、国の補助金も活用して事業を推進し、10年3月、白い楕円形の屋根「魚町エコルーフ」(公募により名称決定)が架けられたのです。総事業費1.5憶円、うち国の補助が1億円という事業です。09年3月13日にオープニング式典が行なわれています。
エコルーフという名称は、このルーフの上に太陽光発電パネルを設置し、ルーフの照明に要する電力を自前で調達するところからきています。環境首都を標榜する北九州市らしいネーミングです。
この事業の効果は、商店街の利用者が単に雨に濡れずにアーケードを歩けるようになった、というところだけではありません。実は、この両商店街は、昔はひとつの商店街であったものが、35年前に役員同士の感情のもつれから北側の魚町1丁目商店街振興組合が脱退し、以来反目の年月が過ぎていたそうです。その時代は、まだ中心商店街に勢いがあり、それぞれが独自の展開を行なっていたのです。
しかし、郊外の大型店の進出などにより中心商店街の勢いに陰りが出始めた10年ほど前から、両者の間に雪解けの空気が流れ始めます。商店街の今後への危機感の共有と、商店街幹部の世代交代が進んだ結果とも言われています。そのようなことから、消費者の利便性の供与もさることながら、両商店街をアーケードで結ぶことにより、真の一体感を生じさせようということになり、この事業につながった次第です。両者の間にわだかまっていたものが、「魚町エコルーフ」により物心ともに解消したというわけです。ハードな施設が、商店街を活性化させようとする関係者の心までも結んだ、という事例です。
実は、このアーケードの下には素晴らしい仕組みも実現しています。それについては、次回お話しいたします。
(株)地域マーケティング研究所
代表取締役 吉田 潔
福岡市中央区天神4-9-10 正友ビル5F
TEL:092-713-2121
URL:http://www.mrkt.jp/
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら