福岡地方裁判所では、現在、福岡市のインプラントを手掛ける「シティデンタルクリニック」を運営する医療法人樹啓会(矢野匡 理事長)に絡む訴訟が複数件起きている。話題となっているこの事件の背景を紐解いてみよう。
かつて、「Search Eye(サーチアイ)」という、タッチパネル式街頭端末・不動産管理システムがあった。このビジネスモデルは、不動産業と広告代理業を融合させた「YES Shop方式」と名付けられ、北九州地区を中心にドミナント形式で展開し、賃貸不動産と地域の店舗情報を利用者が手軽に検察するシステムとして、マスコミでも注目されたことがある。
同システムを開発したのは、北九州市小倉北区中津口の(株)アーネスト・フジエ。同社は1991年11月、中本春起氏が不動産仲介・売買、広告代理業を目的として設立した。また同所に(株)YES SHOP を2006年11月に設立。上記システムのFC化などを積極的に展開し、企業経営者などから出資金を募り、株式上場を目指していた。
ところが08年7月、一通の手紙が株主(出資者)のもとに届いた。内容を要約すると、「07年初頭からグリーンシート市場への株式公開を目指して準備を進めていた。これまでにない画期的な不動産売買のITシステムの構築を株主の皆様からの出資で完成させることができた。ほぼ株式公開できるところまできたものの、サブプライムローンや大証とジャスダックの合併などで市場が落ち込み、公開を延期せざるを得なくなった。この状況を鑑みて、不本意ながら現会社(アーネスト・フジエ)を休業させ、再起に向けて準備する」。
出資者は当然、「数百万円からの出資をしているが、その金はもう戻ってこないのか」と憤りを隠さない。しかも数人が同じ境遇である。なかには「出資金詐欺ではないか」と訴える者もいる。中本氏は同じ頃、樹啓会の相談役財務部長を、06年1月より約1年半務めていた(05年顧問就任)。
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