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中洲歴30年の灰皿~萬月・中洲こぼれ話(10)
中洲バトルロワイヤル
2011年4月27日 11:43

 先日、MLHグループの土屋社長と藤堂和子ママの店へ飲みに行ったときの話。「最近は、地元(福岡)のお客さんが増えてね。こがんおったとばいって驚いとるとよ」という藤堂ママ。店内のカウンターは入れ替り立ち替りで満杯。景気の良い話も然もありなんといった感じであった。
 訪れた店「航空スタンドバー リンドバーグ」は、1971年に藤堂ママが先代から受け継いだ老舗である。店名よろしく、所々に飾られた飛行機の模型が遊び心を演出しつつも、全体はアンティークな雰囲気がただよっている。

 藤堂ママが去った後、ふたりで会話をしていると、「それ!なつかしいですねえ」と、土屋社長が、店にあった灰皿を指した。小生はまったく気づかなかったが、言われてみると、手作り感があるレトロな灰皿である。灰皿しかし、新品同様でピカピカなため、古い物とは思えなかった。
 スタッフさんに聞くと、その灰皿は30年以上前から使っているとのこと。もちろん、1個ではなく、カウンターに用意されている同じ種類の灰皿すべてである。ボーイから身を興した土屋社長は、灰皿をピカピカにしていた駆け出しの頃を思い出したのだろう。

 そうした調度品ひとつにもこだわりがあり、そして、さりげなく置いてあるあたりが名店たる所以ではないだろうか。商売道具を大事に使うということは、お客さんを大事に扱うということでもある。そして、店内にどことなくただよう懐かしい空気の理由、そのひとつを悟ったような気もした。

 余談だが、同店には一流のシェフがいて、美味しい料理にもありつける。ほとんどの店が休む日曜日は定食もやっている。外食頼りの独身男性への配慮だそうだ。
数あるメニューのなかでもオススメは「フレンチトースト」。秘伝のソースに高級パンをじっくりとつけてから焼くという。極上のフワフワ感と絶妙な甘さに、口のなかがとろけそうになる一品だ。最近、医者から「過食」と注意されたが―、甘いもの好きな小生は「リンドバーグ」に行けば、きっと食べてしまう。

【長丘 萬月】

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長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。

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