中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
青島市内中心部に近い、地上28階建ての高層マンション。一室150m2ほどあろうかという高級マンションに招待された。室内の床は一面大理石だ。この部屋の主に「このマンションの一番の自慢はこの大理石ですか?」と尋ねてみた。すると、主の奥様が「いいえ、一番の自慢は浴室に窓があることよ。」という。なので、ご自慢の浴室に案内してもらうと、たしかに窓がある。それに大きな洗面台、洋式トイレ、シャワー。もちろん浴槽はない。
日本ではありえない浴室風景、これが高級マンション?と思いながら「たしかに窓、ありますね」と答えるしかなかった。
ここが文化の違いなのだ。浴室・トイレは人間の不浄なものを洗い流す所だから、中国の住宅のほとんどは台所から遠く離れた家の隅のほうにあるので、通常、窓がない。だから、「浴室に窓」は画期的なのである。
浴槽の考え方も違う。この奥様いわく「日本は水が豊富だから浴槽にお湯をためるのでしょうけど、浴槽があったとしても、主人の入った後に同じお湯に浸かるぐらいならシャワーのほうがマシよ」という。日本なら夫婦ゲンカになりそうな話だが、この仲むつまじい中国人夫婦は、一緒に旅行に行ってホテルで浴槽を使っても相手が入った後、お湯を入れなおして湯船に浸かるらしい。愛していても、それとこれは別なのだ。
青島市内では、ようやく下水道事情が改善してきた。ようやく用を足した後のトイレットペーパーを便器のなかに流しても詰まらなくなったようだ。ただ、古い建物だと建物配管の口径が小さいため、いまだに便器の前には大きなゴミ箱があるところが多い。観光地は改善されつつあるが、郊外の公衆トイレには扉もないところもまだまだ多い。
今年になって日本のシステムバスメーカーと中国のメーカーとの提携が大きく報じられたが、上下水道のインフラ整備にともない、中国でも「この新築マンションの自慢は、日本式システムバスとシャワートイレ」という時代がくるかもしれない。
【杉本 尚大】
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