店が気に入ると必ずといっていいほど、小生はボトルをキープする。最近、つぶれた店の話だが、豪快な飲みっぷりのママさんが小生のボトルを3時間でカラにしたことがある。面白いように酒が減っていくので目を丸くした。後で教えてもらったが、その店にいた女の子たちからは、自分の客がボトルをすぐに空けられて寄り付かなくなることもあり、疫病神のように忌み嫌われていたそうだ。ママが来ると胃がキリキリしていたという。
中洲では、キープボトルの価格は業種によって変わる。スナックは仕入れ値の2倍、ラウンジだと3倍、小生には縁がないが、ホストに至っては5~10倍だったり・・・。ご家庭の晩酌で御用達となっている2,000円の酒が2万円になるところもある。
一方、中洲には、飲み屋に酒を出している酒屋が数軒ある。そこでチェックすれば、店がどれぐらい乗せているかわかる。もっとも、それで「高い」だなんだとケチをつけるのは無粋の極み。上乗せ分には、接客サービス代も含まれていることを忘れないように。
先日飲みに行ったスナックのママさんは、店の方針として高いボトルを無理やりすすめることはしないという。その店の場合、酒の種類問わず利益は同じで、たとえば、仕入れ値が2,000円のボトルは6,000円、5,000円のボトルなら9,000円と、どちらも上乗せ分は4,000円。「高いボトルを無理してすすめても、何の得にもならないし、『高い』という印象を与えるだけですから」と、逆に安いほうをすすめることもあるという。
もっとも女の子の手前、見栄を張りたくなるのが男というもの。ほかの客に見せ付けるという意味も含めて、少々無理して高いボトルを入れる気持ちもよくわかる。痛いほどわかる。実際に痛い思いをしている小生である。
一方、ボトルにまったく利益を乗せない店もある。MLHグループのラウンジ「月下美人」では、ボトルを入れる場合、直接、酒屋から買ってもらうという。店によっても商いの仕方はさまざま。自分の楽しみ方にあった店選びをすることを、おすすめしたい。
【長丘 萬月】
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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