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特別取材

【座談会】博多港、真のマルチ・クロス・ポートへ(4)
特別取材
2011年4月16日 07:00

 ―我々が観光地と言えば、自然遺産や歴史・文化遺産などがすぐに思い浮かびますが、福岡にそれがあるでしょうか。個人旅行レベルで考えた場合、「これだ!」という見せ物がありますか。

 松原 やはり、福岡で観光といえば買い物くらいしか思い浮かびませんね。

 ―そうすると、福岡の街自体をテーマパークとしてもっと売り出すべきではないか。博多港ふ頭(株) 代表取締役社長 江頭 和彦 氏売りを言わずに「観光立県にする」といっても、果たしてできるのでしょうか。

 江頭 街のなかには、個人レベルで中国人や韓国人はけっこう歩いていますし、進化のプロセスのなかにいるとは思います。ただ、中国人の団体旅行にとって、地下街などは「どこに行くかわからない」「集合場所がわかりにくい」など不向きなようです。そういう意味では、受け入れる側の標識や言葉などの体制が整わないといけませんね。

 星野 ただ、JR博多シティはさすがに外国人対応がきちんとなされていました。パンフレットや標識、スタッフまでもが英語、中国語、韓国語の対応ができています。さすがだなと思いましたし、これが福岡のスタンダードになれば大きいと思います。
 観光の発展でポイントとなるのは、リピーターを取り込めるような都市になっているかだと思います。その点で、外国人にとっての福岡は、団体旅行で1回来るのは良いけれども、2回目に個人旅行で楽しめるかという意味では不十分だと思います。

中村 もとき 氏 ―私は、非常に洒落たプロムナードの天神地下街ができた当時、場内アナウンスがフランス語で信じられませんでした。どれだけフランス人が福岡にいるのですか。オシャレに聞こえるからそうしたのだと自己解釈しましたが、まさに福岡の観光の象徴でしょう。何を売り物にするかという足下の分析が足らないと思います。

 星野 福岡のゲートウェイとしての魅力に関する課題は、観光面で言えばふたつあります。ひとつは、福岡市のなかだけでどう楽しめるかを追求することです。イギリスの『モノクル』という雑誌の住みやすい街ランキングで、福岡は毎年世界で15位前後に位置しています。そこでは「ショッピングシティ」と評されていました。であれば、もっと買い物を面白くするのが大切ですし、博多と天神が一体感のある魅力を出す必要があるでしょう。
 もうひとつは、九州新幹線の全線開業で、ゲートウェイの福岡から入ってきた人たちが熊本や鹿児島、大分などに行くのが容易になりますが、ここにネックがあることです。クルージングで入った人に限り、法務省の法令で福岡県を出てはいけないという風になっているわけです。

 ―どのみち、観光で福岡にお金を落としてもらおうというのではなく、九州全体のゲートウェイとして福岡から九州観光をスタートしてもらうようにする、と考えたほうがよさそうですね。そのために、博多港が今後取り組むべき課題は。

 松原 海の玄関口、つまりゲートウェイにふさわしい人流・交流拠点としての機能を強化しなければなりません。まずは、クルーズ船などが寄港する岸壁の延長不足が大きな課題です。現在の中央ふ頭では、カメリアラインとクルーズ客船が同時に入港した場合、クルーズ客船の船首がふ頭から飛び出た状態で係留せざるをえない状況になっています。場合によっては中央ふ頭に接岸できずに、箱崎ふ頭の貨物対応岸壁にクルーズ船が着くこともあります。当然、まわりの景色は倉庫や貨物ですから、外国からのお客さまを迎えるのにふさわしいとはいえません。

(つづく)

【文・構成:徳田 仁】

≪ (3) | (5) ≫

<出席者>
九州大学大学院経済学研究院 教授 星野 裕志 氏  九州大学大学院経済学研究院 教授 星野 裕志 氏
博多港ふ頭(株) 代表取締役社長 江頭 和彦 氏  博多港ふ頭(株) 代表取締役社長 江頭 和彦 氏
国土交通省九州地方整備局 港湾空港部長 松原 裕 氏  国土交通省九州地方整備局 港湾空港部長 松原 裕 氏
中村 もとき 氏  司会進行 中村 もとき 氏


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