―次に"物流"についてですが、物資の輸送量としては航空機よりも船舶が圧倒的に多いですね。
星野 たとえば石油、穀物、LNGなどは将来的にどんなことがあっても航空機では運べません。船舶が主流であり続けることは間違いありませんが、半導体など貴重なものはエアカーゴで運ばれる比率が非常に高くなっています。
そう考えると、航空輸送と船舶輸送は別物のように思えますが、実は福岡にはその中間があるのです。それが、「RORO船」と呼ばれるフェリータイプの船です。これは、コンテナを積んだトラックごと船で運び、向こうについたらそのまま目的地に走るものです。博多港であれば、上海エクスプレスが博多と上海の間で週2便、それからカメリアラインが博多と釜山の間に毎日就航されています。
誰が考えても、航空機は船より早いように思うかもしれませんが、倉庫から最終目的地までのリードタイムで考えるとRORO船も遜色ないですし、何よりもコストが航空機より圧倒的に安いのです。これが博多港の強みだと思います。
―国土交通省の立場として、博多湾をどのように見ていますか。
松原 国は、コンテナターミナルとしては東京湾と大阪湾に重点を置いていますが、博多港はコンテナ船だけでなくRORO船などさまざまなタイプの船が就航しており、またアジアと近接しています。鉄道もあり、高速道路もあり、内航船もある。アジアのゲートウェイとして入ってきたものがいろいろな方法で各地に送られます。
そういう意味では、アジアとの物流の結節点としての役割を果たしていますし、国の期待も高まっています。
―アジアの港で言えば、釜山、上海をはじめシンガポールなども発達しています。これらは「ハブ港」と言われていますが、博多港をこれからどのように位置付けていけば良いでしょうか。
江頭 「ハブ」というものを幻想的に捉え過ぎていて、その定義が何かというのが明確にわからなくなっているのが現状でしょう。たとえば釜山新港ができるとき、中国はまだ大連、青島、上海などの港に本格的なコンテナターミナルは未整備でした。ところが、最近は中国などで急激に開発が進んでいます。そうなると、別に釜山経由で貨物を運ばなくても良いという流れになるわけです。
釜山に匹敵する港が周辺諸国にできている今、それぞれの港でサービスが提供できるようになり、極端に「ハブ」というかたちのターミナルはできてこないと思います。
【文・構成:徳田 仁】
<出席者> | |
九州大学大学院経済学研究院 教授 星野 裕志 氏 | |
博多港ふ頭(株) 代表取締役社長 江頭 和彦 氏 | |
国土交通省九州地方整備局 港湾空港部長 松原 裕 氏 | |
司会進行 中村 もとき 氏 |
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