―博多港では「エコターミナル」という、日本でも唯一の取り組みをしているとお聞きしました。
松原 これはたしかに全国初の取り組みですね。江頭社長のところで、まさに国として実証実験に入ったところです。従来は油を使って、クレーンなどを動かしていたのですが、これを電動化する試みです。給油の時間も省けますし、メンテナンスも相当省力化できます。
また単に電気で動かすだけでなく、コンテナを積み上げるときは電気を使いますが、下ろすときにはそのエネルギーを回収して再利用します。いわゆる回生エネルギーですね。これで電気効率を高めようとしています。年間コストで約46%削減可能で、CO2は80%減少、稼働時間は7%上昇するという結果が出ています。あとは投資費用を上回る効果が出るかどうか、数年かけて検証していきたいと思います。
星野 この電動化の意義はすごく大きくて、これが実現して環境にやさしい港ができるということになれば、荷主がCSRなどの観点から博多港を使うのは良いことだとなり、この点を世界にPRできるわけです。
また、アイランドシティにコンテナターミナルがありますが、居住地域と隣り合わせです。そこで騒音がなくなり、さらにCO2が削減されたとなれば、まさにレジデンスとインダストリーが同居可能な場所ということになりますから、この実験はぜひ成功してほしいと思います。
―最後にひと言ずつ、博多港に対する思いをお話し下さい。
松原 観光に話を戻すと、私は少し前に釜山から博多に船で戻ってきましたが、海からは本当に博多は良い街だなと思います。しかし、博多港に近づくにつれて、だんだん気持ちがしぼんできます。釜山に行けば、ダイナミックな動きのなかに吸い込まれるように入っていく一方で、博多はきれいなところから入ってきても、博多港国際ターミナル付近はコンテナが置いてあったりして、「ようこそ」と言ってくれるような歓迎ムードがあまりないですね。これを何とかしたいです。
江頭 日本をリードするエコターミナルの実現が1つ。あとは先進的な港湾情報システム、ITですね。我々はこの分野では負けていません。この2点をさらに進化することで、博多港を盛り上げていきたいですね。
星野 九州がエコアイランドとしてやっていくためには、博多港をエコポートとして位置付けることが必要です。また、京浜港や阪神港などとは違う発展をしていかなければならないでしょう。そのひとつのキーワードがエコであることは間違いなく、ゲートウェイとしての機能を高めていくしか生き残る道はありません。
―"観光"でも"物流"でも、博多港はゲートのひとつとして捉え、九州全体が発展していくような方法を模索していく必要がありますね。本日は皆様ありがとうございました。
【文・構成:徳田 仁】
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<出席者> | |
九州大学大学院経済学研究院 教授 星野 裕志 氏 | |
博多港ふ頭(株) 代表取締役社長 江頭 和彦 氏 | |
国土交通省九州地方整備局 港湾空港部長 松原 裕 氏 | |
司会進行 中村 もとき 氏 |
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