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再選を目指すオバマ大統領の最大の敵は共和党ではなく"経済"(3)~対立候補の不在
特別取材
2011年4月27日 07:00
国際政治経済評論家 中田安彦(SNSI研究員)

 オバマが押しとどめられている国内では、去年の中間選挙で共和党の「ティーパーティー」と言われる勢力が勝利。財政再建を強く主張し、過剰な公的福祉を削減せよとする同勢力と、「財政再建」を巡る論争が激化している。その一方で、5月か6月にも到来する、合衆国債務の法定上限引き上げの「条件闘争」が始まっている。

ポール・ライアン下院議員 共和党でオバマ政権を批判しているのは、下院予算委員会の委員長を務める若手のポール・ライアン下院議員だ。ライアンは「繁栄への道」と銘打った独自の予算案を作成。オバマ大統領が12年間で4兆ドル(335兆円)の予算削減を提案しているのに対し、10年間で6兆ドル(500兆円)の支出削減を提案している。
 共和党案は過半数を超える下院では採決されたが、民主党がわずかながら多数を占める上院では否決される。共和党案はオバマ大統領が1期目の目玉政策として打ち出した、公的健康保険の政策を大きく見直す予算になっている。

 だが、健康保険の予算削減は共和党内にもあまり過激にならないように配慮したい勢力もいる。結局、大統領と共和党が妥協せざるをえないだろう。昨年の選挙で示された「民意」とはいえ、ティーパーティーを必ずしも快く思わない勢力は共和党にもいるということだ。

 それと合わせて当面の課題なのが、合衆国の債務上限の引き上げだ。現在14兆3,000億ドルに設定されている連邦債務上限の引き上げが実現しないと、アメリカはデフォルトになる危機を迎える。4月上旬にも予算案を巡る両党の不一致が原因で、連邦政府事務所の一時閉鎖の危機があったが、今のところ「つなぎ予算」を作成しその事態を防いでいる。

 債務上限を巡る議論が始まったとたん、米マグロウヒル系の格付け会社のスタンダード&プアーズが米国債の格付け見通しを引き下げた。これは、格付け会社を使って、ティモシー・ガイトナー財務長官率いる米財務省が膠着する議論を打開しようと仕掛けたものともうけとれる。実際、事務所閉鎖や債務上限引き上げができなければ、オバマ大統領としては共和党を非難すればいいわけである。

 このように、オバマ大統領は現職の強みを活かしながら、今のところは「無風」に近い形で選挙運動をスタートさせた。問題は共和党側には、本命と言える候補が出てきていないことだ。現在、最も有力と言われているが、元マサチューセッツ州知事で前回の大統領選挙にも出馬したミット・ロムニー。この人物はその前には投資ファンド「ベイン・キャピタル」の経営者だったこともある。問題はロムニーが、共和党が現在批判している公的保険を同州で導入したということだ。「ロムニーは、オバマの公的保険政策を批判しているが首尾一貫していない」と、共和党のティーパーティーから批判を受けている。

 同様にティーパーティーからの人気がいっときは高かった、前アラスカ州知事のサラ・ペイリンもほとんど当選の可能性がない。リバータリアン政治家のロン・ポール下院議員も同様だろう。最近になって登場してきた、大富豪のドナルド・トランプなどもマスコミが話題作りのためにもてはやしているだけだろう。
 オバマ政権の中国大使をやめて大統領選挙を準備していると言われる、ジョン・ハンツマンもビジネスマンであり中国通であるが、自分を大使に任命した大統領と選挙で戦うなどジョークとしか思えない。ハンツマンは2016年の大統領選挙ねらいだと思われる。かつてブッシュ王朝の再建を担うと言われていた、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事にも動きはない。

 なお、オバマは一期で終わったカーター元大統領の失敗例を研究し、同時に共和党を再生させたレーガン大統領にもついても読書を通じて研究しているとも言われる。周りに強敵が居ない以上は、彼にとっての課題は決定的な外交・経済での失点を避けることだろう。ただ、副大統領候補をジョゼフ・バイデンから現在国務長官を務めているヒラリー・クリントンに変えることはありそうである。

(つづく)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

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