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再選を目指すオバマ大統領の最大の敵は共和党ではなく"経済"(4・終)~原子力政策
特別取材
2011年4月28日 07:00
国際政治経済評論家 中田安彦(SNSI研究員)

 オバマといえば、「グリーン・ニューディール政策」を打ち出し、2009年10月には「スマートグリッド」の実現などをフロリダ州の演説で打ち出した。このスマートグリッドには大手IT企業のグーグルなども関わっているのでいずれは実現するのだろうが、気になるのはオバマ大統領の原子力政策である。

 福島原発事故への対応を協議した日立製作所では、今月12日に、社長直轄の「原子力発電所プロジェクト推進本部」を発足させたが、30人の日米合同専門家チームのなかに日立と原子力事業で合弁を組むゼネラル・エレクトリック(GE)、電力大手エクセロン、エンジニアリング大手ベクテルなどの技術者が加わっている。このなかのエクセロンという企業がオバマの有力な資金源になっていることを3月23日の「ブルームバーグ・ニュース」が伝えている。オバマ政権は2012年では360億ドルの原発新設への融資保証予算を付けているだけに気になるところである。

 エクセロンはイリノイ州に本社を持つ電力会社で、化石燃料による発電のほか、イリノイ州、ペンシルベニア州、ニュージャージ州で17基以上の原発を動かしており、アメリカで一番大きな原発事業者(アメリカの原発発電量の2割を占める)である。オバマが上院議員だった時代には政治資金を提供した企業の7番目になったほか、前出のアクセルロッドとエマニュエルがそれぞれ政治コンサルタントと弁護士だった時代には顧客でもあった。

 私が前掲書の『アメリカを支配するパワーエリート解体新書』で明らかにしたように、オバマとエクセロンの関係はオバマが政治家を志す当初からのものである。オバマはシカゴのハイドパークという地区に住んでいるが、このあたりにはシカゴ財界人がうようよと住んでいる。大統領選挙当時、オバマは、若い頃に過激派「ウェザー・アンダーグランド」のリーダーだった「テロリスト」のウィリアム・エアーズ(現在はイリノイ大学教授)との交友があったとして批判されたことがある。

トーマス・エアーズ 当時、メディアは「爆弾魔」と交際していたオバマは左翼だという批判をしていたが、ほんとうに重要なのは、この過激派のエアーズの父親であるトーマス・G・エアーズ(07年死去)が、実はエクセロンの前身となる「コモン・ウェルスエジソン社」の取締役であるほか、イリノイ州財界の重鎮であったという事実である。

 政治家になるにはパトロンがいる。オバマの左翼過激派との交友はそのような「カネ絡み」だったのである。このようなことはアメリカの大手メディアもあまり書かない。そのように米国においても政治家というのは財界の代弁者たらざるを得ない部分がある。これは日本で東京電力が自民党の政治家とコネクションを長年にわたって創り上げたのと同じことだ。何処に金が集まるか見ていけばその国の本当の実力者の姿が見えてくるのである。

(了)

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<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

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