NET-IB NEWSネットアイ

ビーニュース

脱原発・新エネルギーの関連記事はこちら
純広告用VT
カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

未来トレンド分析シリーズ

世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(2)
未来トレンド分析シリーズ
2011年4月26日 07:00
参議院議員 浜田和幸

 アメリカのオレゴン州立大学の小麦の専門家、メアリー・バーンホーレン教授に言わせれば、「UG99は時限爆弾と同じ。すでにアフリカを席巻し紅海を経てイランから南アジアへ広がりつつある。これがロシア、中国そして北米に達するのは時間の問題」とのこと。これこそ世界の穀物生産にとって最大の脅威と言っても過言ではない。各国がその対策に血眼になっているにも関わらず、日本の場合は政府も消費者団体もまったくといっていいほど無関心のままである。

 東日本を襲った大地震が引き起こした大津波と福島原発の事故。その対応も急を要するが、世界的な食糧危機がわが国にも津波のごとく押し寄せてくる可能性が高いわけで、そのための防波堤を構築する必要があるだろう。

 2011年3月末、バングラデッシュではUG99の拡大を防ぐための緊急対策会議が開かれた。この病原菌は津波のごとく、エジプト、エチオピア、アフガニスタン、パキスタン、ネパールと広がり、アフリカから南アジアを飲み込む勢いである。コメと小麦に食生活を依存するバングラデッシュでは2010年、UG99に耐性を持つ品種の普及員を1,299人養成し、国内での対策に乗り出した。

 とはいえ、同国内の小麦栽培地の1.5%しか応急手当ができていないのが現状。新たな対策が話し合われたが、前途は厳しい模様である。一方、ネパールでも「ビジェイ(勝利の意味)」と呼ばれるUG99への耐性を持つ小麦の新品種を導入し始めた。

小麦 メキシコに本部を構える国際トウモロコシ・小麦改良センターでは「少なくとも世界の小麦生産量は20%ほど減少するだろう」とし、「アジア、アフリカを中心にし、10億人を超える人々が生命の危険に直面する」と指摘。アメリカの小麦に関しても100億ドル以上の損失が発生するとの見通しを明らかにしている。当然のことながら、欧米の穀物メジャーや穀物価格を織り込んだ金融商品は投機的な動きを見せ始めているほどだ。

 日本では主に北海道で小麦の生産が行なわれているものの、本土の気候風土には適さないということで、海外からの輸入に頼りきってきた。その海外で小麦が大きな危機に直面し始めている。坐してパニック状態に直面するのか。それとも小麦に依存しない食生活に切り替えるのか。あるいはネパールやバングラデッシュで導入が進む、抵抗力の強い新たな品種の小麦を日本独自に開発する道を選ぶのか。震災対応に押し流され、世界の小麦市場において未曽有の混乱状態が発生しつつあることに、ほとんどの日本人が気付いていない現状では、選択も限られる。

(つづく)

≪ (1) | (3) ≫

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。


*記事へのご意見はこちら

関連記事

powered by weblio


未来トレンド分析シリーズ一覧
未来トレンド分析シリーズ
2011年7月25日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2011年7月21日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2011年7月20日 15:24
純広告VT
純広告VT

純広告用レクタングル


IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル