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世界の食糧危機をネタに大儲けを目論むアメリカのアグリビジネス(3)
未来トレンド分析シリーズ
2011年4月27日 07:00
参議院議員 浜田和幸

 ところで世界の人口は現在68億人。2050年までには90億人を突破し、早晩、100億人の大台に乗りそうだ。しかし一方、地球温暖化の影響とみられる異常気象の結果、食糧の生産が減少する傾向が顕著となりつつある。近年、北アフリカから中東にかけ、各地で食糧をめぐる暴動が発生した。民主化を求める「ジャスミン革命」もきっかけは食糧難であった。

 こうした危機的状況を克服するにはどうすればよいのか。ひとつの有効な手段と考えられているのが、遺伝子組換え作物の開発と導入である。アメリカは世界最大の穀物輸出国であるが、大豆やトウモロコシなどの大半はすでに遺伝子組換えとなっている。こうした作物は除草剤耐性や害虫抵抗性を人工的に与えられているため、農薬を散布する回数を減らすことが可能となり、農作業の負担が軽減でき、生産コストを下げるメリットを生み出すと期待されている。とはいえ、致命的な問題も多い。

 遺伝子組換え作物を積極的に導入している国の1つが南アフリカである。アメリカ本土以外では最も広範囲にわたり、遺伝子組換え農業が繰り広げられている。その南アフリカで09年3月、想定外の問題が起こった。トウモロコシ農家の間で8万2,000ヘクタールに及ぶトウモロコシがまったく実を結ばないという異常事態が発生し、トウモロコシ多くの農民たちが経済的に大打撃を受けることになってしまったのである。外見からは何ら問題ないように見えるが、順調に成長していたはずのトウモロコシが皮をむいてみると中にはまったく実がなっていない。そんなわけで農家の間には衝撃が走った。

 実はこの遺伝子組換えトウモロコシの種を提供していたのはアメリカの大手種子メーカー、モンサントである。事態を重く見た同社では、さっそく補償の手続きを始めたが、この事件は遺伝子組換え作物の危険性について改めて警鐘を鳴らすことになった。

 同社の初期段階での反応は「おそらく、実験室で種子を製造する際に十分な養分を注入することができなかったことが原因ではないか」とのこと。とはいえ、モンサントの種子を購入し収穫を期待していた1,000軒の農家にとっては、実のなっていないトウモロコシでは市場に出すことができない。かつてない落胆と戸惑い、そして怒りの声が上がったのも当然であろう。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。


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