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特別取材

市民と共生する博物館(2)~新しい文化への期待
特別取材
2011年4月30日 07:00

九州国立博物館 館長 三輪 嘉六 氏

 日本からアジアへ飛び出してビジネスしようとする場合、よく「相手の歴史・文化の違いを把握しておく必要がある」と言われる。商習慣の違いなどにつながるからだが、では日本人は本当に自国の歴史・文化をきちんと踏まえたうえで海外進出を考えているのだろうか。観光についても同様のことが言える。こうした問いに答えるヒントを得るべく、九州国立博物館館長の三輪嘉六氏に、長く歴史・文化の分野に携わってきた立場から話を聞いた。

(聞き手、文・構成:I・B編集長 大根田 康介)

 ―九州が日本文化の形成のうえで、とくにアジアとの接点として重要な基点ということがよくわかりました。

 三輪 アジアだけでなく、ヨーロッパもそうです。16世紀、ヨーロッパ文化が初めて日本に入ってきます。教科書的に言えば、フランシスコ・ザビエルが最初の触れ合いとなるわけですが、「大航海時代」のなかでヨーロッパ文化が日本と接点を持つわけです。その基点となるのが九州です。近世になると、国際交流の窓口として博多や長崎などが門戸の中心になります。
 そういう意味で、九州にある博物館としての理念は「アジアとの関係をしっかり見ていこう」となるわけです。たとえば中国や韓国、近年では東南アジアなどへ向けた新しい視点を広げています。
文化交流展示室 最近では2006年2月、福岡県がタイ王国のバンコクと友好都市として提携しました。東南アジアの拠点の1つとして経済・文化交流を行なうということです。当館も文化庁といっしょにバンコク国立博物館で展覧会を、今年1月15日から3月13日まで行ないましたが、それまでに助走期間がありました。07年9月から最近まで、合計9名の研修生をタイから招き勉強してもらい、ワークショップに参加してもらうなどの活動をしてきました。
 彼らが自分の国に持ち帰る成果は何かと言えば、1つは日本文化を紹介することです。しかもそれで終わるのではなく、市民が参加するような展覧会にしようと、日本から約90名のボランティアをはじめとする市民が参加しました。あちらでもワークショップをし、現地の市民と交流しました。この展覧会を日本では帰国展として4月12日から6月5日まで行なう予定です。できればタイの市民にも参加していただき、2つの国の共通性あるいは差異性を感じていただきたいですね。
 文化を通じて市民と交流する、国と国が新しい文化的交流を広げることで次の発展につなげる。それが博物館の役割の1つだと思います。私たちは大きなターゲットを定めながら、新しい交流のなかに常に新鮮さを求め、新しい文化への期待を持ちながらさまざまなことに取り組んでいます。

(つづく)

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<プロフィール>
三輪 嘉六 氏三輪 嘉六(みわ かろく)
1938年岐阜県生まれ。奈良国立文化財研究所研究員、文化庁主任文化財調査官、東京国立文化財研究所修復技術部長、文化庁美術工芸課長、同文化財鑑査官、日本大学教授などを経て、2005年から現職。専門は考古学、文化財学。現在、文化財保存修復学会会長、NPO法人文化財保存支援機構理事長、NPO法人文化財夢工房理事長、「読売あをによし賞」運営・選考委員など。主な著書に、「日本の美術 348家形はにわ」(至文堂、1995年)、「美術工芸品をまもる修理と保存科学」(『文化財を探る科学の眼5』国土社、2000年)、編著に「日本馬具大観」(吉川弘文館、1992年)、「文化財学の構想」(勉誠出版、2003年)など多数。


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