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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (135)
経済小説
2011年5月 3日 08:00

 会計的な観点から見たらどうだろうか。
 会社のバランスシートは左側に資産が列記してある。(資産の部)開発会社の場合は、資産の大半は土地建物(仕掛建物含む)である。
 バランスシートの右側には、それらの資産を持つための資金はどのような方法で賄われたかが列記されている(負債および純資産の部)。開発会社の場合は、大半が銀行からの借入や社債で金を調達している(負債の部)。社歴の長い会社の場合は、自社の長年の稼ぎが蓄積されていて、負債が少ない場合もある(純資産の部)。
 企業が倒産を決意する直接のきっかけは「支払不能」「債務不履行」であるが、開発会社の場合はこのバランスシートの資産の部の大半を占める土地建物がバブルの崩壊に伴って急激に安くなり、しかしバランスシートの負債の銀行借入は安くなるわけではないので土地を売っても借金を返すことができなくなり、それによって借入債務を返済できなくなる場合がほとんどである。

バブル崩壊で... つまり開発会社のバランスシートは市場経済と連動しており、市場でバブルが崩壊することによって倒産してしまうのである。このとき、社歴が長く、過去の稼ぎをたくさん蓄積している場合は、相対的に純資産が多く負債が少ないので倒産に強い。
 しかし新興会社は、資金を銀行から借りてでも急速に成長することを目指すのが常である。それは、より社業を発展させたいという事業欲ゆえである。当社のような新興開発会社は、今回の不況で一挙になぎ倒された。
 このような構造は一般企業や金融機関も同様である。不動産の他にも投資対象となる資産はたくさんある。伝統的な国際分散投資の対象である国内外の株式や債券はもちろん、原油や貴金属それに農作物も取引の対象となっている。これらは、現物の取引だけでなく、リスクヘッジの目的から先物市場も成立し、投機的なものを含め投資対象として活発な取引が行なわれている。これらの商品の単独の銘柄に投資をすることも可能だが、複数の銘柄や物件を束ねた商品も多様に開発されている。これが投資信託や証券化商品である。
 銀行も投資ファンドも製造業も小売業も、それに年金などの社会保険もあまねく多様な商品に投資をし、市場の変動に伴って影響を受ける構造となっている。

 バブル崩壊で、不動産や株式の市場が暴落した場合、開発会社は上記のような事情で一気にバランスシートの資産の部が毀損した。
 そのとき、銀行はどうなっていたのか。銀行は資産の部に巨額の貸付金や投資有価証券などを計上しているが、それが当社のような企業の倒産によって、やはりバランスシートが毀損したのである。製造業や小売業では値引き販売が必要になったことにより、棚卸資産(在庫)の評価を下げざるを得なくなり、やはりバランスシートが毀損したであろう。

 バランスシートが毀損して、資産の部が負債の部より小さくなった状態を債務超過という。しかし、上記のように、資産価格の下落によるバランスシートのアンバランスは、資産が縮小することによって起こるので、本来、債務超過というよりは資産過小といったほうがよかろう。財産の総額よりも借入の総額のほうが多いので、こうなると倒産は目前である。純資産が厚い(過去の稼ぎの蓄積が厚い)会社は負債の部が相対的に小さいので、債務超過まで至らずに済むかもしれない。それでも資産が減る分、過去の蓄積が喰われて体力が弱るのは避けられない。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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