NET-IB NEWSネットアイ

ビーニュース

脱原発・新エネルギーの関連記事はこちら
純広告用VT
カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (137)
経済小説
2011年5月 5日 08:00

<市場原理は誤りか>

 それでは、市場を規制すれば、不確実性を排除もしくは抑制でき、バブルの崩壊は避けられるのか?

 あろうことか鳩山首相は、政権奪取の総選挙の数日前にアメリカの新聞に寄稿し、市場原理主義と金融資本主義に終止符を打つべきという主張を開陳した。それに変わるべきものが何か、というと、それは「友愛の精神」であるというのである。そして、市場原理主義では、人は人件費としてしか定義されないが、本来、人間は地域社会の根幹である、と述べるのである。
 まあ、これはあくまでも理念を述べているのであり、実際の政策としてはセーフティネットを充実しましょう、ということであろうが、しかし自由経済圏第2位の首相になる人が「市場主義に終止符を打つ」などとは言ってはいけないだろう。
 経済政策に神学論争を持ち込むべきではない。

片や保守論陣の側は親米路線が基調だが... 片や保守論陣の側は親米路線が基調だが、こちらも「日本的な価値観を守るためには、アメリカ的な市場経済の行き過ぎは避けるべきである」というような論調を前面に出すことで、様々な既得権益層を守るための保護主義と結びつきがちである。こちらは地域の産業の振興のためにといって、不要な道路を作ったり、農村の共同体を守るため、あるいは生態系を守るために、コメの輸入制限を守ろうとしたり、医療現場を市場原理主義に委ねると患者の差別が生まれるといっては病院経営への株式会社の参入を押しとどめようとしたりしている。

 このように昔から、市場原理主義は日本の価値観とは相容れないものとされ、先物取引などとんでもないという論調は、左翼・右翼の別を問わず根強いが、事実はその逆である。

 自由度を狭めたところで、そういう市場はなくならない。それはそのような市場が必要だからである。原油先物で投機的な売買がなされたからといって原油先物市場を規制するようなことはできない。そもそも市場とは、リスクを減らすことを目的に生み出されたものだからである。

 先物取引は古代にすでに存在していた。その目的は、取引される商品(昔のことなので農産物などであろう)の価格変動リスクの回避である。現物の取引だけではどうしても気候変動などの事情により価格変動が激しくなってしまうため、将来の(たとえば3カ月後の)取引価格を握ったのが先物取引の始まりである。世界で最初の近代的な先物取引所は、江戸時代に大阪にあった堂島米会所であった。それは江戸時代の初期に現れ、その後、徳川吉宗の時代に公認されている。
 コメは現代の感覚では商品だが、江戸時代の感覚では通貨でもあった。その通貨が、コメの現物を運ぶことでしか取引できないのでは持ち運びに不便すぎて活発な経済活動は見込めなかった。しかしコメを証文にすることで取引がしやすくなり、取引がしやすくなると、今度は取引用の通貨が急激に価値変動してしまっては困るので、リスクヘッジのために先物取引が行なわれるようになったのである。
 そもそもリスクヘッジのために発生した市場を、市場変動のリスクを抑えるためといって規制してしまうことは自己矛盾である。堂島米会所の取引も幕府の役人には投機的と思われたが、実に70%の取引でリスクヘッジ機能が有効に機能していた、との研究がある。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

≪ (136) | (138) ≫


※記事へのご意見はこちら

関連記事

powered by weblio


経済小説一覧
純広告VT
純広告VT

純広告用レクタングル


IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル