中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
中国では5月1日、「刑法修正案(八)」と改正「道路交通安全法」が施行された。モータリゼーションの進展により、ようやく飲酒運転に対する処罰が従来の「行政処分」から「刑事罰」の適用に切り替えられたのだ。この2法案により、酒気帯び運転の場合、6カ月免許停止処分にした上で、1,000元から2,000元の罰金刑に処される。また、血液中のアルコール濃度が高い「酒酔い運転」の場合「危険運転罪」を適用して刑事責任を追及、5年以内は免許の再取得を認めないこととなったようだ。さらに、飲酒運転で大事故を起こした場合、刑事責任を追及するとともに、免許の再取得を生涯にわたって認めないという。
自動車の保有台数が2008年には約4,950万台であった中国では、今年中には約7,500万台の日本を抜いて、世界第2位の自動車保有国になりそうだ。4月18日、上海で開催された国際モーターショーにおいて中国工業情報化部の幹部が「もっとも低く見積もったとしても、中国の自動車保有台数は2015年までに1億5,000万台に達し、石油の供給に大きな圧力を与えることになる」と明らかにしたと中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
新車販売台数では、日本の年間490万台の約4倍、2,000万台を超える勢いで、アメリカを抜いて世界第1位の新車登録国となっている。一方で、交通事故も飛躍的に増えているようだ。
日本では、2010年の交通事故件数は約72万件、死亡者数は4,863人で10年連続減少していると発表されたが、中国公安当局からは具体的な数値は発表されていないものの死亡者数もかなり増加しているようだ。今年2月6日、産経ニュースは、中国が交通事故の統計で死者数を過少発表したとの報告を世界保健機関(WHO)がまとめ、中国に異例の修正を求めていることが明らかになったと報じた。中国の公安当局は2007年の死者数を8万1,649人と発表しているが、WHOが行った独自調査では、約2.7倍の22万1,135人にのぼるという。
いまだに車道を平気で横切る人、信号を守らない車、歩行者用信号のない長い横断歩道など、交通安全環境が整わないまま、都市部の自動車は増え続けている。今回の法改正によって、せめて飲酒運転の減少が望まれるところだ。
【杉本 尚大】
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