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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (141)
経済小説
2011年5月 9日 07:00

 こうしたことから私は、DKホールディングスの仕事が面白くなってきたので、基本的には営業部の領域であるオーナーズクラブや建築部の領域である協力会についても、その主だった人たちと顔見知りになり、オーナーズクラブと協力会に支えられてDKホールディングスが存在する、という独特の世界を理解するようことに努めた。その結実が平成18年11月の創業20周年記念パーティであった。このようなことは従来であれば管理部の仕事であったが、黒田社長から指示されたので私が主務として、美人広報を補佐役として担当することとしたのである。そこで私は、オーナーズと協力会に支えられてここまで来たDKホールディングスが、これまでのステークホルダーとの関係を忘れることなく、当時黎明期を迎えていたファンドビジネスの世界を目指し、さらなる飛躍を目指すという構図でこのパーティをプロデュースしていった。
私が主務として、美人広報を補佐役として... 営業活動に関しては黒田社長が、九州各都市の攻略を仕掛ける方針を示したため、鹿児島・熊本で賃貸経営セミナーを開催するなど、営業活動を積極的に支援していった。

 私は平成18年に取締役に任じられた。先述のとおり、黒田社長は対外的なイメージとは異なり、人事に関しては本質的に優しさが先行するタイプであり、このためか当社の取締役は、法規上必要だった建築担当を除けば入社年次による序列を重んじて選任されていた。このため、会社は口では実力主義をうたっていたが、とくに営業系の人材は定着度が高く、しかも取締役が皆若かったため、中途入社者が部長や取締役まで到達できる機会は当面なさそうだった。とくに営業部門で、社員の間でこのような閉塞感が漂っていることを私は見て取った。
 創業社長にとって、人材を取締役に登用するということは、その人材を真に自分の仲間と認めることである。そのため、このような順送り人事はある程度必然のことでもある。そういうなかで私が異例にも取締役に任じられたのは、上記のように会社の「成り立ち」を理解しようとしたことを黒田社長に認めていただいたのではないかと思っている。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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