平成19年より私は、総務・経理担当取締役 兼 総務部長として、会社の管理部門全般を統括するようになった。それまでのベテランの管理部長が定年となり勇退されたためである。これを期に私は、DKホールディングスの社員の閉塞感を打破し、社員のレベルの底上げを図っていこうと決めた。
経営計画だけではなく決算、開示、資金繰りをも担う立場となったため、これまで以上に私には重責と思った。私は計画を取りまとめ、それを公表し、その後決算をしたうえで開示を行なう。このような兼務状況は、ややもすると粉飾決算の動機となりかねない。そのことは黒田社長から総務・経理担当の内示を受けたその場で申し上げた。同じ事象に対して、経営企画と経理とでは、立場上見解を異にすることがありうる。たとえば販売用不動産をたくさん仕入れる、ということに対しては、経営企画としては来期の増収増益のために歓迎ということになるが、経理の立場からはバランスシートが重くなりすぎないようにけん制しなければならない、というようなことがあった。しかし幸いに部下に経理部長がおり、総務課長も実質的に部長としての仕事ができる方だったので、通常は稟議制度に基づくジャッジメントで事足り、最後の一年を除けば、そのようなジレンマに陥ることはなかった。
そういうなかで、会社のマネジメントレベルの底上げは私にとって最大の課題であった。これまで前任者は、給与体系や研修制度といったことにはあまり関心を持っていなかったため、これらが未整備なまま取り残されていたからである。数年前に江口常務の提案により、人事コンサルを導入しつつ給与・評価制度を構築していたが、これは同常務ほか各取締役の了承によりプロジェクト体制で導入されたにも関らず、各取締役からの新制度導入の要望が強かった。導入検討時に真剣に検討しなかったのか?
ともあれ私が総務・経理担当となった初年度には、給与体系の一新を行なった。
これまでの当社の制度はややメリハリを欠いており、社員にとって将来の昇給可能性を読みにくいものだった。これをクラシックな職能資格制度に切り替え等級を整理のうえ、各等級内で最初の数年は比較的スムーズに昇給させ、その後は等級昇格しない限り昇給ラインを頭打ちにすることで、昇格しない人には努力を促すとともに人件費の不如意の逓増のリスクを避けるようにした。
新卒採用への転換も行なった。
これまでは、当社では新卒採用は散発的にしか行なわれておらず、ほとんどが中途採用であり、採用の主導権は現場にあった。その結果表面化した問題は、現場の幹部の保身本能が働くことにより、優秀な人材が入りづらくなったことである。すなわち、幹部が自分のポストを守るために、敢えて能力の高い人材の採用を拒否する姿勢が強まっていた。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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