夢の都への扉をつくる。くしくもこれは福岡市が掲げるゲートウェイ構想に近い。ただし、市はアジア、山崎氏はハリウッドという違いはあるが。一般に支店とは、本店から離れてサービスを行なったり地域のニーズを吸い上げたりするために置かれるものだ。ではハリウッド日本支店とはいかなるものになるのだろうか。
「これまで映画や文化の情報は日本に来るだけの一方通行でした。この状況が長く続いているため、あたかも当たり前のように感じられていますが、私は構造を変えることで一方通行を解除することができると考えています。そのためには世界とつながる場所が必要になるのです。それを福岡市に担っていただきたいと考えているのです。パラマウントとUCLAエクステンションが完成したならば、人と物と技術とお金が動きます。ここが中心地となれば、映画関係者も、新鋭クリエーターも福岡に集まるようになるでしょう。こう言い切れるのは、このような施設が少なくともアジアにはないからです。国内だけではなく、勉強するためにアジア中から人が集まってくるかも知れません。人が集まると情報が集まってきます。するとハリウッドはその感性を吸い上げて新たな制作を開始することになるでしょう。ただ遊べるだけではなく、ただ学べるだけでもない、人と技術が世界とリンクする場所を思い描いているのです」(山崎氏)
福岡には世界的なゲーム制作会社が多数集まっている。たとえば映画とゲームが対等につながることができる場にもなるかも知れない。日本人が世界に貼り出されるポスターを制作する日が来るかもしれない。また、福岡市からは日本トップクラスのミュージシャン、俳優ら芸能人が多数輩出されている。まだ日の目を見ていない芸能人の卵たちもこの施設ができることで直接ハリウッドにデビューできる可能性までも生まれるのだ。豊富なコンテンツを持つパラマウントだからこそ、その窓口があればさまざまな可能性が生まれる。芸能だけではない。たとえば映画コンテンツを使ったグッズをつくる交渉も格段にしやすくなるだろう。
それが今まで実現できなかったのは情報が一方通行だったからだという指摘である。支店を設けてこちらの情報を送り、向うの情報を受け取る。これだけのことで、これだけ「夢」が広がるのである。これだけの大きな話は、そうはなかろう。それだけに信じる者、信じられない者が現れるのも仕方がない。
【柳 茂嘉】
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