知人で紹介された店で飲んでいた夜。その時、座った席は、店内が見渡せる店の奥であった。４組ぐらいのほかの客と店の女の子が視界に入っていた。そこでふと気づいたのだが、髪型がストレートの女の子ばかりなのである。ついでに、となりに座っている子を見ると、彼女もまたストレートである。

　店によっては、髪型や服装などを統一するところもある。ためしにとなりの子に聞いてみたが、そんなコンセプトみたいなものはないとのこと。小生に言われ、「そう言われれば、たしかに髪を降ろしている子が多いですね」と首をかしげていた。
　キャバクラ嬢と言えば、「盛り髪」と言われるヘアスタイルが、その代名詞と言わんばかりに流行っていたように思える。なかには頭１個分くらい盛っているような子もいた。ジャンルはまったく違うが、お昼の長寿番組をもつ某大物女性芸能人の髪のなかには、キャンディーが隠されているという話ではないが、なかに何が入っているのかと好奇心をそそられたものである。

　絶滅したというわけではないが、このところ、いわゆる「盛り髪」を見かける機会が減ったように思えるのだ。キャバクラ嬢の気合の象徴ともいうべき"盛り"が少なくなっていることが、一体何を意味するのだろうか―。
　美容室にもよるが、ストレートの場合でも盛った場合でも、料金はさほど変わらないと聞く。「大盛り無料」のようなイメージだろうか。中洲の美容師は、「盛り」のリクエストがきた場合は、腹をくくって仕事にかかるという。決して、店や女の子のコスト削減のために「盛り」が減ったというわけではないようだ。

　そうすると考えられるのは、客の好みが変化したということである。「盛り髪」の派手な女の子よりも、落ち着いたストレートの子のほうが、好まれているということになる。一方、中洲の某美容師は、「今、『盛り髪』のリクエストは減ってきているが、ブームがまた再燃し、再び『盛りの時代』がやってくる」とにらんでいるという。

　「盛り」が歓楽街の元気の象徴であるかどうかは、ただちに判断がつくものではない。ただし、少なくともファッションが、時代を反映するものである以上、キャバクラ嬢の「盛り」の量が景況を示すひとつの参考になっても面白いのではないかと思う。

長丘 萬月（ながおか まんげつ）
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。

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