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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (144)
経済小説
2011年5月12日 07:00

一般社員から新卒者へと継承され... 会社を創業し成長させてきたオーナー社長にとっては、会社が新卒採用に踏み切るということはとても嬉しいことである。創業から間もない企業の場合は、どうしてもまっさらな人材を採って教育を施している余裕がないので、創業後しばらくはどの会社も中途採用に頼らざるを得ない。中途採用の社員は即戦力になるが、皆他社の色に染まっておりどこかで他人感が残る。これを取りまとめ、当社のDNAで染めていくには、強いリーダーシップを持った幹部が不可欠である。それが欠如すると会社はいつまでも自社のDNAを持つことができない。しかし新卒を採用し始めると、そこには教え、育て、伝えるという作業が始まる。

 教え、育て、伝えるためには、そのためのコンテンツとリーダーシップが必要である。必要なコンテンツは、会社の社風や業務のノウハウといったことである。必要なリーダーシップとは言うまでもなく幹部が社員を統率する力である。まさにそれが会社のDNAの正体である。
 これらは理論的には新卒採用を行なうより先に固めておくべきものであるが、実際には会社のDNAを順次固めつつ、採用活動も徐々に新卒中心に切替えていく、というのが普通であろう。創業社長には自分が立ち上げた会社のDNAが固まり、そのDNAが幹部から一般社員、一般社員から新卒者へと継承されていくのを見ることが、自分のことのように嬉しいのは頷ける。自分自身のDNAが、会社の未来を担う若者に継承されていっているようなものだからである。

 このような考え方から新卒採用への転換を決めた。初年度は秋に入ってから来春入社予定者を採るという遅いスケジュールだったが、それでも十分に満足できる人材を採用することができ、若手を中心に社内への刺激となった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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