<倒産の責任(人的側面)>
事業譲渡が済み、再生計画案の提出も済んだ6月以降、私には若干の時間の余裕が生じた。そこで私は、DKホールディングスの倒産について振り返り、これまでのような乱文をしたためてきた。そのなかで、倒産会社の社長の会「八起会」会長である野口誠一さんがまとめた『倒産の原因ベスト10』というものに出会った。
《倒産の原因ベスト10》
1.経営者の高慢・経営能力の過信
2.社員教育の不備・欠如
3.事業目的・目標・計画性の欠如
4.業界情報の不足と環境変化への対応
5.新商品の欠如・技術開発の遅れ
6.家庭不和・同族経営の弊害
7.公私混同・経営哲学の欠如
8.決断力・実行力の欠如
9.計数管理の不足と勉強不足
10.ワンマン・反省心の欠如
これを見ると倒産の原因は、すべて経営陣に帰するということがわかる。そしてこれらの原因を克服して会社を存続させることができるのも経営陣の力である。それも各取締役の個人の能力というよりは、取締役会によって発揮される総体としての経営陣としての力であり、そういった経営陣のリーダーシップのもと育成される人材の力によるのである。振り返ってDKホールディングスの場合も、『倒産の原因ベスト10』を仔細に検討すると、いくつかの項目はきっぱりと決別することができていたが、それでもいくつかの項目には如実に当てはまっている。
そういう意味で、会社の管理担当として人材育成を図る立場にあった私は、この倒産劇の責任を痛感している。いろいろな経営判断が必要ないろいろな局面で、けん制の役割を果たしてきたのは事実であり、取締役会の議決で反対意見を述べたり、リスクを情報を報告したりしたが、それでも取締役会の一員として、議決された経営方針に従って業務執行した以上、経営責任は免れない。
もちろん、倒産には様々な類型があろう。市場が変化し一瞬のうちに市場を失ってしまうもの。金融収縮が一気に押し寄せて多数の企業が一斉に破綻するもの。好況時には人手不足倒産というのもある。最近では、法律の変化により特定業種が廃業を余儀なくされるようなケースすらある。
しかし私はそうだからといって、DKホールディングスの倒産が、ファンドバブルの崩壊や、銀行の不動産業界への貸し渋り、建築基準法の改訂による工期延長などの外的要因にのみによる、という立場はとらない。もちろん倒産の本質は、バランスシートの劣化である。バランスシートが劣化する過程の事象はこれまで書いてきたとおりであり、当社の民事再生の申立文書にもそのように記載されているが、こと経営陣の道義について語るとき、それは表面的な観察に過ぎず本質ではない。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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