中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
福岡の街を歩くと学生らしき中国人をよく見かけるようになった。それもそのはず、日本学生支援機構の統計によれば、日本には約14万人の外国人留学生が在籍し、その6割は中国人留学生となっており、年々増え続けているようだ。中国教育部の発表によれば、留学生として海外に渡った中国人は昨年末で127万人に達し、中国は世界最大の留学生供給源になっているという。
留学先のトップはアメリカで、日本はオーストラリアに次いで3位となっている。
こうした日本への留学を下支えしているのが中国国内に点在する日本語学校だ。写真は青島市内中心部にある1992年設立の日本語専門学校、現在約230名の学生が日本語を学んでいるという。日本語教師は25名在籍、学生10名前後でクラスを細分化し、学生の目的に応じて対応しているという。留学や日系企業への就職を目的とする学生だけでなく、日系企業、日本人バー、日式レストランで働いている社会人まで、生徒の層も幅広い。
日本の大学への留学を目指しているという学生に話を聞いてみると「中国が技術や制度で日本に遅れているところはたくさんあると思うので、日本の大学で専門的な技術を学びたい。ここで日本語の学習をしていると、ますます日本に行ってみたくなった」という。それではなぜ、日本の大学を目指すようになったのかを聞いてみると「友だちがアメリカを目指すというので、それじゃオレは日本を目指す」と言ったのがきっかけだったらしい。さらに「金持ちの子供や頭のいいやつはアメリカに行くけど、自分みたいなどっちつかずの人間は日本がちょうどいい」と、冗談ともとれない本音を語る。まるで、「一流はアメリカを目指し、二流は日本を目指す」と言っているようだ。
「一番じゃなきゃだめなんですか」という世相と不景気が一流の国際化を阻んでいるのだろうか。
中国では、地方都市においても日本語学校は活況を呈している。学生たちにとって、外国語を学習することは、第一義的には就業上の好条件を導き出すためのツールのひとつである。一方で、「世界の工場」から「世界の市場」へ変貌しつつある自国の経済環境変化を察知し、「いいものだけを世界から」とどこかの会社のコマーシャルにあるような「目利き役の存在意義」を外国語に見出しているのかもしれない。
【杉本 尚大】
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