昨年(2010年)12月の福津市議選で、当選者を含む4人の立候補者が公費負担となる選挙ポスター代を水増しして請求していた問題は記憶に新しい。それを受けて、4月の福岡市議選においても、一部の立候補者に同様の過大見積もり疑惑が浮上。すでに、選挙ポスター代が業者との契約時の金額から、選挙後に提出した選挙運動費用収支報告書では減額されていたという事実が報じられている。
福岡市議選における立候補者が福岡市選挙管理委員会委員長あてに提出した「ポスター作成契約届出書」によると、選挙ポスター1枚あたりの価格に直した場合、370円から2,459円までとかなりの幅がある。貼られている現物を見ても、その違いは素人目にはわからないところだ。一体、この価格差はどこからきているのだろうか。
福岡市内の某印刷会社に、選挙ポスターと同様の規格でポスターを制作した場合の費用について確認した。同社によると、制作費用は印刷費用とデザイン費用に分かれ、印刷費用はオフセット印刷の手法であれば1,000枚程度までは何枚印刷しても値段は変わらないという。
つまり、選挙区ごとにポスター掲示場は数が違い、発注されるポスターの枚数も変わってくる。印刷業界では、ポスター1枚あたり価格ではなく、総制作費用で契約されることが一般的であり、発注枚数が少ないほど1枚あたりの単価は高くなることになる。ちなみに福岡市議選における発注枚数は、最低230枚、最高722枚となっている。
一方、デザイン費用は、デザイナーや写真撮影を行なうカメラマンによって値段が変わってくる。ただし、「よほどの有名デザイナーや一流カメラマンに頼まない限り、デザイン料金込みの制作費用は15万円から20万円の間でおさえられるのではないか」(印刷業者)という。
市選管によると、条例に基づく市議選公費負担ポスターの作成費用の上限額は次のとおり。東区97万2,534円、博多区84万2,062円、中央区79万8,762円、南区90万160円、城南区76万2,290円、早良区90万2,280円、西区90万160円となっている。いずれも、同規格のポスターの価格からはかけ離れている。
【吉澤 英朗】
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