<多発する労働争議への対応>
日系企業をはじめ、中国では外資企業における労働争議が多発している。なかには、ストライキなどに発展し、生産活動に影響をきたしているところもある。労働争議やストライキの発生が頻発した背景は、社会の空気が「資本の論理」から「労働の理論」へと変わってきたことが大きい。ポスト外資導入の今、「労働契約法」の実施や「最低賃金の引き上げ」など、労働者を優遇する措置が強調されてきている。大きく変わったことは、これまではお金を出していた企業側が尊重されてきた風潮が、ここ2、3年は労働者側が尊重されるようになってきたことだ。もうひとつの背景には、人口構造上の変化も挙げられる。外資工場の主力労働者は20代30代の若年労働者だが、彼らの人口は約2億3000万人で、来年ごろにはピークを迎えると言われている。これまでの大量にあった労働力の「買い手市場」には、地域や年齢層によって「売り手市場」へと変化の兆しが出てきているのだ。さらに、若年層には、都市部で育ち、一定程度の教育も受けている人が多く、「知識化」「情報化」が進んでいる。彼らはよりよい処遇を目指す意識も強い人たちなのだ。
このような環境のなか、対応に遅れた企業は苦しい。優遇された外資の「甘え」体質のままでは、厳しくなった環境への対応は難しいだろう。特に、日系企業は、経営の「現地化」の遅れや反日感情などから、労働争議などが発生しやすく、狙われやすい存在となっているので、注意しなければならない。
そんな状況に対応するためには、現地での日本人管理者と現場との意思疎通をしっかりとはかり、「現地人管理職」の育成を目指すことは効果的ではないか。「空気を読めない」日本人をひとりでも減らし、「経営の現地化」をはかることは、多発する労働争議への最も重要な対応策といえるのではないか。
九州と中国の関わりは深い。中国人から見た、九州のもったいないところはいくつもあるという。まず、観光資源が素晴らしいにも関わらず、認知度が不足している。致命的にブランド力に欠けている。特産品も素晴らしいが、中国へ持っていく方法を理解していない。今の中国の観光客のテーマは大きく3つ。新幹線、富士山、銀座だ。ただ、遠くで見るだけの富士山には不満を持っていて、登らないとダメだという。九州は素晴らしい観光資源がある。阿蘇山も天神もある。中国人は温泉も好きだ。九州の各県がバラバラにアピールするのではなく、天神と阿蘇山とハウステンボスが一緒に組んで、オール九州として売り込んだりすれば、関東や関西と十分に張り合えると思う。ぜひとも、地の利を生かして、大いに盛り上げていただきたい。
【杉本 尚丈】
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