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特別取材

市民と共生する博物館(3)~国の光を観る
特別取材
2011年5月 1日 07:00

九州国立博物館 館長 三輪 嘉六 氏

 日本からアジアへ飛び出してビジネスしようとする場合、よく「相手の歴史・文化の違いを把握しておく必要がある」と言われる。商習慣の違いなどにつながるからだが、では日本人は本当に自国の歴史・文化をきちんと踏まえたうえで海外進出を考えているのだろうか。観光についても同様のことが言える。こうした問いに答えるヒントを得るべく、九州国立博物館館長の三輪嘉六氏に、長く歴史・文化の分野に携わってきた立場から話を聞いた。

(聞き手、文・構成:I・B編集長 大根田 康介)

 ―ほかに海外ではどのようなところと提携されていますか。

 三輪 すでに韓国の公州および扶餘の国立博物館、中国の南京博物院、さらに2010年に内モンゴルのフフホトにある内蒙古博物院などと学術文化交流協定を締結しています。
 もちろん、ヨーロッパも視野に入れています。あちらにも、アジアをターゲットにした博物館や研究所、大学があります。そうしたところとも連携を持ち、ヨーロッパから見たアジアという視点も大事にしながら、より多角的にアジアを見ていこうとしています。そうしたあり方を、我々自身の博物館活動のなかにしっかり位置づけていきたいですね。

 ―観光と博物館の関係について、どのようにお考えでしょうか。

九州国立博物館 館長 三輪 嘉六 氏 三輪 日本の博物館には、これまで観光という理念はそれほどありませんでした。近年になって、ようやく観光と結びつけていこうとする動きも出てきましたが、私は「文化観光」という立場からいろいろと提言しています。観光のもともとの意味は「国の光を観る」ということでしょうが、国や地域で醸し出されるアイデンティティーをしっかりと見せること、理解してもらうことだと思います。
 その観点で言えば、今まで日本の博物館はむしろ観光を難しく解釈してきた部分があります。それを当館で言えば、「市民と共生する」というテーマを設定し、わかりやすく、楽しく、面白くという視点で、国や地域のアイデンティティーをしっかり見せていこうということです。
 観光は文化ですが、今まで「文化観光」という言い方はありませんでした。日本の観光と言えば、温泉に行くとか、ワイワイガヤガヤ、楽しく、面白くというのがテーマだったと思います。しかし、もし博物館で歴史や文化をもう少し深めて皆さんにお見せする場にしようとしたとき、もう一歩深みのある見せ方があるのではないかと思います。そこで、市民と共にその見せ方を研究し、工夫していく。それがこの地域の文化力につながると思います。

(つづく)

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<プロフィール>
三輪 嘉六 氏三輪 嘉六(みわ かろく)
1938年岐阜県生まれ。奈良国立文化財研究所研究員、文化庁主任文化財調査官、東京国立文化財研究所修復技術部長、文化庁美術工芸課長、同文化財鑑査官、日本大学教授などを経て、2005年から現職。専門は考古学、文化財学。現在、文化財保存修復学会会長、NPO法人文化財保存支援機構理事長、NPO法人文化財夢工房理事長、「読売あをによし賞」運営・選考委員など。主な著書に、「日本の美術 348家形はにわ」(至文堂、1995年)、「美術工芸品をまもる修理と保存科学」(『文化財を探る科学の眼5』国土社、2000年)、編著に「日本馬具大観」(吉川弘文館、1992年)、「文化財学の構想」(勉誠出版、2003年)など多数。

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