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特別取材

市民と共生する博物館(4)~異文化を伝える観光
特別取材
2011年5月 2日 07:00

九州国立博物館 館長 三輪 嘉六 氏

 日本からアジアへ飛び出してビジネスしようとする場合、よく「相手の歴史・文化の違いを把握しておく必要がある」と言われる。商習慣の違いなどにつながるからだが、では日本人は本当に自国の歴史・文化をきちんと踏まえたうえで海外進出を考えているのだろうか。観光についても同様のことが言える。こうした問いに答えるヒントを得るべく、九州国立博物館館長の三輪嘉六氏に、長く歴史・文化の分野に携わってきた立場から話を聞いた。

(聞き手、文・構成:I・B編集長 大根田 康介)

 ―そういう意味では、博物館自体の変化が求められていますね。

 三輪 日本には博物館法に基づく博物館が4,000館以上あります。国立博物館は東京、京都、奈良、九州の4カ所だけですが、ここは博物館法の制度とは別の存在で、むしろ文化財の保存や活用などを主要素にした場となっています。各自治体の博物館や資料館など人文系、歴史系博物館は生涯教育を主とした目標においています。
九州国立博物館 館長 三輪 嘉六 氏 ただ、一般の方にはそんな細かな分類はわからず、博物館として一括りにされるでしょう。私としましては、やはり博物館は「教科書よりもわかりやすく、学校よりも楽しい」、「面白くなければならない」というのが原則だと思います。これからの博物館はそのような取り組みをしていくことで市民生活のなかに溶け込んでいくだろうと思います。
 たとえば、パリならルーブル美術館やオルセー美術館、ロンドンなら大英博物館、ニューヨークならメトロポリタン美術館が当たり前のように観光コースに入っていますが、日本の博物館や美術館は必ずしもそうではありません。
 ただ欧米の例から見れば、これからの日本の文化力あるいは観光力というのは、決して悲観することはありません。これまで取り組み方が少し間違っていただけなのです。皆さんが海外に行けば博物館や美術館を見に行くのと同じように、これからは大勢の人が訪れることが不可欠になるような場の1つとして博物館が位置づけられてくるだろうと思います。
 しかし、そのためには、博物館自身がどのような努力をするのかが課題です。逆に言えば、これまでそのような努力をしてこなかった。これから日本の博物館には、まず国や地域のアイデンティティーをしっかりと面白く、楽しく見せていくあり方が必要です。当館の場合、これが冒頭に申し上げた860万人という数につながっていると思います。
 博物館は「文化観光」の対象に十分なり得ますし、文化を伝える観光という立場でのあり方を考えることはできると思います。ルーブル美術館にわざわざ訪れるくらいの魅力を、これからの日本の博物館がどれくらいつくれるかが課題ですし、我々もそこに挑戦していきたいですね。

(つづく)

≪ (3) | 

<プロフィール>
三輪 嘉六 氏三輪 嘉六(みわ かろく)
1938年岐阜県生まれ。奈良国立文化財研究所研究員、文化庁主任文化財調査官、東京国立文化財研究所修復技術部長、文化庁美術工芸課長、同文化財鑑査官、日本大学教授などを経て、2005年から現職。専門は考古学、文化財学。現在、文化財保存修復学会会長、NPO法人文化財保存支援機構理事長、NPO法人文化財夢工房理事長、「読売あをによし賞」運営・選考委員など。主な著書に、「日本の美術 348家形はにわ」(至文堂、1995年)、「美術工芸品をまもる修理と保存科学」(『文化財を探る科学の眼5』国土社、2000年)、編著に「日本馬具大観」(吉川弘文館、1992年)、「文化財学の構想」(勉誠出版、2003年)など多数。


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